『3月 戸面原ダム釣行』


  池島 竜一(SMITH STAFF)



自分のルアー釣り歴は40年になる。その過程において牛久沼、印旛沼、亀山ダム、北浦といったフィールドの全盛期というものを経験できたことは自分にとって非常に有意義だった。
とにかくバスが良く釣れ、どんな時期にどんな場所でどんな釣り方をすれば釣れるのか、それが結果となって明確に表れた。ルアーの使い方というのもあれこれ試し、それが正解であれば釣果というかたちで結果が出る。 そうした素晴らしい環境の下でバス釣りのノウハウを体得できたことは本当に恵まれていたとしか言いようがない。

では昨今の関東のメジャーフィールドはどうだろう。上手い人でも日に数匹、下手をすればノーフィッシュということも珍しくない、それが当たり前になった。 そうした中で技術を磨くことも大事だが、僅かばかりの釣果ではそれが果たして本当に正解だったのかどうかですら判断が付きにくいのも確かだ。

単純な話、バスが良く釣れる場所で釣る方が得られる経験値は高くなる。
けれどもほとんどのフィールドが安定期に入りバスの個体数も減少の一途を辿る中、今さらバスが良く釣れるフィールドなんてそうそうない。一度安定期に入った水域でバスが再度大きく増加するという事もない。 「昔はよく釣れたよねぇ」そう口にしつつ、あの頃のフィールドに戻りたいと多くのシニアバサー達は願う。

残念ながらその願いは叶わないが、その思いを少しばかり満たしてくれるフィールドはある。近年相次いで解禁された房総のダム湖だ。


3月3日 戸面原ダム

昨年秋の貸しボート解禁からずっと続いていた強い濁りは2月半ばになってようやく少し薄れてきたものの、2月末に通過した爆弾低気圧に伴う降雨によって再びカフェオレ色の湖面を拝むこととなった。

3月になり昼間は暖かくなってきたものの朝はまだ冷え込む。桟橋で準備を進める中、ボートは霜で真っ白だった。


朝の時点で水温は8度。とはいえこの濁りの中でやれる釣りは決まっている。シャローの吹き溜まりのカバー撃ちだ。真冬でもこの釣りで結果が出ていたので迷いはなかったが11時過ぎまでノーバイトが続く。それでも焦る必要はない、水温が上がれば喰い始める。

途中、濁りが薄れているエリアはないかと上郷方面インレットを遡ってみる。すると最上流部近くで多少濁りが薄れているのを確認したが、水温が本湖より3度も低い。魚っ気は全く感じられず本湖に戻る。


正午近くになると水温も11度台にまで上昇してきた。予想していた通りカバー撃ちでもバイトが出始め、3バイトを得た。キャッチ出来たのはスレンダーな魚体の41cmと唇の赤い36cm。共にバンドゥクローのテキサスリグ、フォール中に喰った魚だった。



3月24日 戸面原ダム

季節も進行し、そろそろ状況が変わっているだろうとこの日も戸面原ダムの湖上に浮いた。水位は満水。

春の魚というのは全域で万遍なく釣れ始めるのではなく局所的に釣れ始め、その後に釣れるエリアが徐々に拡大していくというイメージを持っている。それは霞ヶ浦水系然り、印旛沼もそうだった。そのため今日は湖の全域を見て回りたいと思っていた。


まずは宇藤木方面のインレットを目指す。最上流部近くまで上がってみたが魚がインレットに射してきている気配は感じられなかった。後続のヘラ釣りの人達も続々と細い川筋に入ってきたので本湖へと戻る。

朝という事もありフィーディングに上がって来る魚がいることを期待してハードルアーで可能性がありそうな場所を2箇所ほど探ってみるが反応は得られなかった。


本湖では実績の高い吹き溜まりをランガンし、パワーフィネスでのスモラバ+BFシュリンプとバンドゥクローの2本立てで撃っていく。

この日は朝から水温が11度台だったこともあり、昼近くまでノーバイトということはなく早々にバイトが得られる展開。特に水温が12度を超え始めると魚が浮き始め、着水直後のヒットが多くなった。

スモラバ+BFシュリンプ2.8インチで2尾をキャッチ。そのうちの38cmの口の中を覗き込むと喉の奥から2本のエビの触角が見えていた。

さらにバンドゥクローのテキサスリグでも1尾追加。これは20cmクラス。こんなサイズが釣れるようになったというのも1つの季節進行の目安となる。


続いて、3週間前にも見に行った上郷方面の最上部を再度見に行く。
ボートが遡上できる限界の最上部まで遡ると水質がややクリアアップしていたが相変わらず魚の気配は皆無。バスどころか小魚1尾泳いでいない。 この時点で本湖の水温は13度台に達していたのだが最上流部は10度しかなく、魚が上流目指して射しているというわけではないようだ。

だが、この川筋をやや下った付近でとあることに気付いた。パッと見は水が濁っており水温も13度台だったのでこの付近は本湖の水だと思ったのだが、エレキを動かした際にクリアな水がモワッと上がって来るではないか。 つまり、低層部は上流部からのクリア気味の水となっていた。

狙いどころとなるカバーが限られていたが、付近を丹念に探ってみると魚が溜まっているスポットがあり3バイトを得た。まずまずのサイズも掛けたのだがミスをしてしまい魚は手に出来ず。
もう少し季節が進行したらここにいる魚が一気に上流部に向かいそうだ。この日の段階ではその一歩手前にある魚なのだろう。

本湖のカバー撃ちに戻る。ますます魚が浮き気味になっており、着水直後に浮きゴミがモワッと動いてヒットする魚が多くなった。こうなるとなかなかエキサイティングでついつい早アワセをしがちになりミスを連発してしまったが、視覚でもバイトを予見できる釣りというのはかなり面白い。
バイト数の割に手にした魚は2尾だったが、いずれも水深20cmもないような場所でのヒットだった。

最後はキャンプ場筋の最奥まで行き、スモラバ+BFシュリンプで2バイトを得て1本を追加。



この日はバイト数は多かった割に計6尾で終了。予定通りに湖のほぼ全域を見て回ったが、結果としては本湖の東側でバイトを多く得られたということになる。一方で爆発力がありそうな川筋の上流には魚の気配がないという結果となった。


3月31日 戸面原ダム

湖岸の桜も満開となり、陸上ではまさしく春爛漫と言った状況になった。桜の開花が起爆剤ではないのだろうが、この湖を訪れるバスアングラーの数も1週間前と較べて倍以上に増えた。

しかし朝の湖面は不思議と静まり返っている。普通の湖沼であれば明け方にはあちこちで魚のモジリが見られるはずだ。だが戸面原ダムは魚のモジリが極端に少ない。おそらくは強い濁りのためだろう。

この日は水位が30cmほど減水。水温は朝の時点で14度台。相変わらず濁ってはいるが、前週よりは少し落ち着いた印象だ。
昨年秋の解禁以降、強い濁りと時期的な関係もあって期待していたほどの釣果が伴っていなかった戸面原ダムだが、ここにきてマイナス要因は少なくなってきている。そろそろ本来のポテンシャルが見えてきてもおかしくはない。


6時10分。開始時刻になるとアングラーの多くは宇藤木方面の上流部へと一目散に向かっていった。自分は前週の手応えが良くなかったために川筋へは入らず。本湖の数箇所をビッグベイト、クランク、スピナーベイトで狙いに行く。小さなダム湖ゆえに湖上の混雑が懸念されたが本湖がガラ空きなのは自分にとってはラッキーだった。

多少は濁りが薄れてきているので可能性はあるかと思ったがハードルアーではノーヒット。ルアーを追尾して来る魚はおろか見えバスの姿も全くない。2箇所ほど本湖にある流れ込みを見に行くも同様に魚影は確認できなかった。2時間ほどで巻き物系に見切りをつけた。


8時を過ぎてから本気の釣りを開始。この日も吹き溜まりをスモラバ+BFシュリンプを撃つと実に呆気なく釣れてしまう。しかも1週間前と比べてバイト数が比較にならない程に多い。
さらにもう1つの発見は、この日はスモラバでスローに誘う釣り方よりもバンドゥクローのテキサスリグをスピーディーに撃っていく方がバスの反応が断然いいということだった。



この日は天気も良く、昼近くになると水温も15度を超えた。するとどうだろう、シャローでヘラブナがハタキ始めた。通常、ヘラブナがハタキに入るとシャローのバスは喰わなくなるというのが定説だ。にもかかわらずこの日はますますバスのバイトが増えてきた。

午前中に複数の先行者が散々攻め尽くしたような吹き溜まりでもバイトが連続する。自分自身が散々撃った後の場所であっても1時間後に入るとまた釣れるようになっている。新しいバスがどんどんシャローに射してきている、そう感じられた。



途中で風が吹き出したのを見逃さず、風下に向かってシャロークランクを巻きに行く。すると小型ではあったがすぐに1尾出た。だがすぐに風が止んでしまいその後は続かず。しかし風が吹き続けている日であれば再現性は期待できそうだと思った。

戸面原ダムのように濁りの強い湖では強い波動を発するクランクベイトが適していると思うのだが、低水温期のバスにその泳ぎは効きにくいというジレンマがあった。そのため低水温期はクランキングをマッチさせにくかったのも事実だ。ようやく強波動のクランクベイトに反応が得られる時期になったことでこれからは出番が増えてくれることだろう。


その後は再びバンドゥクローでのカバー撃ちを続けたが夕方にかけてますますバイトが増えていった。テキサスリグの釣りでこれだけバイトが続くなんて本当に久しぶりだ。
最終的なこの日の釣果は23尾。大型には恵まれなかったが、朝から夕方まで無我夢中でひたすら釣り続けた1日だった。

関東のメジャーフィールドも30年前はこうだった。いい場所に落とせば当然のようにバイトがある。今の時代にこんな釣りが楽しめるなんて本当に貴重な事だと思う。



この日は出船したアングラーの多くが二桁のバスを釣り上げていた。これはいわゆる「春爆」なのか?自分はそうではないと思う。 自分の中での春爆の定義というのは、いわゆる釣れ始めの春先に条件を満たした湖中の一部のエリア、短いタイミングにおいていち早く行動を開始したバスの一陣に遭遇する事だと思っている。

この日の戸面原ダムの釣れ具合というのは、湖のほぼ全域において大勢のアングラーが多数のバスを釣り上げることが出来たというもの。だからこれは春爆と呼ぶべきものではなくて、ただ単に好機を迎えた戸面原ダムが本来のポテンシャルを見せ始めたということなのではないかと考えている。


【戸面原ダムに行かれる際の注意】
  • ボートの予約が必須ですが、バス釣りが出来る日は限られています。バス釣りが出来る日は戸面原ダムボートセンターのホームページで確認して下さい。
  • バス釣り用のボートは25艇のみ。これを超えるとボートの予約は出来ません。
  • フットコンエレキ用のバウデッキで、L字金具を使って固定するタイプのものは使えません。
  • 免許不要艇はありません。エレキを使用する際は免許が必要です。
  • ボートは1名乗船のみ。2名乗船は不可。
  • これ以外にも何点かのルールがあります。釣行前に戸面原ダムボートセンターのホームページを確認して下さい。

戸面原ダムボートセンター
Tel.0439-68-1587
HP:http://www.geocities.jp/tozurahara/


【使用タックル】

 ROD  REEL  LINE  LURE
ツアラーV-SPEC
TVC-70H
REVO
MGX-SH-L
FCスナイパーBMS
14lb.
バンドゥクロー(テキサスリグ)
(タングステンバレットシンカー1/4oz、ストレートフック#2/0、シンカーロックS)
ツアラー改 REVO NEOS
2500S
PE1.0号 2.6gスモラバ+BFシュリンプ2.8インチ
ツアラーV-SPEC
TVC-65M/HG
REVO
STX
ギルフロロカーボンライン12lb. OPAマッディービーツ、他



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