冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2013 遠州灘釣行記 》


■ 秋の風物詩

 長く暑い夏が終わり、徐々に気温も下がりはじめると熱くなるフィールドがある。遠州灘サーフだ。この季節大型の青物が回遊することは知られていたが、タックルの進化とソルトアングラーの増加により、サーフ攻略のタクティクスが構築され、オフショアのターゲットと思われていた魚種がより身近になってきた。

 晩秋のカタクチイワシやコノシロをベイトにしている大型の回遊魚 ブリ・ワラサがその代表で、その便りが届くとアングラーは睡眠時間を削って浜に立ち、季節の風物詩になった青物達とのゲームに興じることとなる。


■ 今年の遠州灘サーフ

 今年は台風が多くサーフに立つことができなかったアングラーも多かった。秋を前にサーフをメインフィールドにしているアングラーは、積極的に浜に出て地形の変化をリサーチしながら回遊魚の接岸を待つのだが、度重なる台風により今年は情報収集もままならない。その一方で海の中は確実に季節は移り変わり、10月始めにもかかわらず伊良湖岬では90クラスのランカーがランディングされ、荒れた海を嫌った青物が湾内の海岸線を回遊したと聞いている。

 浜名湖の湾奥ではマダカが好調のようだが、私の狙いはあくまで大型の青物。内海の誘惑に惑わされることなく、秋の本格的な青物の回遊にむけ、遠州灘の各ポイントの情報収集を10月後半から始めた。


■ 朝活開始

 近頃、出勤前にアウトドアアクティビティーを楽しむ社会人が増えているそうだ。「エクトリーム出勤」「朝活」と呼ばれるこの生活スタイルは、コアな釣り師にとっては当然の行動で、私もその愛好者のひとりである。その朝活は季節のターゲットを追い求める釣りだけでなく、釣りをしない日は片道15kmをロードレーサーで通勤するサイクリストにもなる。

 その中で最も私を熱くさせるアクティビティーが大型回遊魚を狙い撃つサーフキャスティングゲームだ。今年もいよいよその季節がやってきた。年内は自転車を車庫に追いやり、ロッド片手に早朝5時起きの朝活が始まる。「今年は獲るぞ!待ってろよ!鰤。」


■ 11月18日(木) 朝活4日目 若潮

 潮替わりの若潮。潮の動きが良くなり、夜明けのタイミングに満ち込みを迎える潮周りが続く。あとは食いが立つ北西風とベイト次第。今年のベイトはカタクチイワシとも言われているが、足の速いイワシよりもコノシロの方がシルエットも大きく、プラグへの反応もいいので個人的には楽しみなのだが。

 この日は田原市内の表浜サーフに入る。暗いうちはハルカ145Sでマダカを狙いながら青物の気配を伺う。リップが小さくスリムなシルエットのハルカは、本当に気持ちよく飛ぶ。メタルジグには及ばないものの、一世代前の重心移動のミノーを遥かに凌駕する飛距離はマダカのみならず青物にも大きな武器。波の立ち具合を見ながら、水深のあるエリアを中心に水流の変化や手前のかけあがりを丹念に探っていく。

 東の空が赤く色付き、綺麗な朝日が姿を見せた。いよいよ青物の時間。日の出から1時間程が勝負で、ほとんどこの時間に魚をキャッチしている。
 そこでルアーをお気に入りのリベンジャーシェルの37gに変え、フルキャスト。シルエットが大きく、メタルジグよりも比重が軽いので沈下スピードが遅く、フォールの時の動きも気に入っている。サーフや堤防で出番の多いジグの一つ。今日はアワビシートが貼られたシェルバージョンのグリーンを結び、ボトムを取ってからロング・ショートを織り交ぜながら誘っていく。ハイギアを使っているが早巻きではなく、ゆっくりとジグをスイミングさせるイメージで、時にはフォールでイレギュラーなスライドを加え反応を待つ。

 沖にはパラパラ海鳥がいるものの、戦闘モードではない。ランガンをしながらサーフを見回り、鳥やアングラーの動きを注視する。日も高くなり、出勤時間も気になり始めた。その時早朝からの先行者が浜から上がり、東側のポイントが空いた。鵜や海鳥が浮かぶそのポイントは何か魚の雰囲気があるようで、先行者たちは少し粘っていたようだ。
 まずは沖にリベンジャーをキャストしてボトム、ミドルと棚を意識しながらゆっくり引いてくる。数投目に沖で何かが当たり、合わせを入れると何かに引っかかったような重い引き。走るわけでもなく、首を振るわけでもないがなかなか寄ってこない。ボラスレ?と回収モードに入ろうとするがなかなか波打ち際のブレイクから寄せられない。何か変だ?と思ったとき。波の切れ間に大きな尻鰭が見えた。「デカイ!マダカだ。」ここからは慎重にやり取りし、魚の動きを見ながら寄せ波に乗せて一気にランディング。スミスグリップで顎を掴むと安全なところまでズリ引き上げる。

 ロングノーズのこのグリップは安心して顎を捉えることができる。これまで小さなものを使い危ない思いもしたけれど、これからは安心してランディングできる。早速測ると85cm。デカイ。メタルジグで獲った最長寸。カタクチがベイトになっており、少し大きなリベンジャー37gはまさにジャストサイズ。台風で消化不良だった今シーズン。いいスタートを切ることができた。



■ サーフ本格化

 11月中旬に入り気温の低下とともに伊良湖岬の先端には大量のカタクチイワシが接岸し、マダカの大爆釣が続いた。80オーバーのマダカが多数キャッチされ、そのなかにはブリも確認されたようだ。同じころ御前崎港ではコノシロやイワシを追ったワラサやブリが湾内に入り、恒例のお祭りが始まったようだ。11月も中旬を迎えいよいよ本格的なサーフシーズンに突入。ますますソルトモードのスイッチが入る。


■ 11月19日(火)朝活7日目 大潮

 北西の風が吹く天気予報。伊良湖岬は期待できるが出勤前のポイントとしては距離もありハードルが高い。ただ先端地区はベイトフィッシュの気配が濃厚なため、より先端に近い赤羽根ロングビーチ周辺のサーフに入る。ルアーアングラーは5名程度。昨年不調のワラサの影響か?台風の出遅れで結果が出ていないのか?アングラーが少ない。気になるポイントをランガンしながら鳥山が立てば走っての迎撃も出来そうだ。ただ鳥はベイトの群れを特定できておらず、青物の気配はない。ただ今シーズンは、薄暗い時間帯に突然のバイト。これでは海鳥をあてにならず、キャスティングするしかない。そこで青物迎撃用のリベンジャーをセットしようとボックスを見る。「あれ。37gが無い。」なんと家に置いてきてしまった。貴重な37gは残り少なくボックスにも予備が無いのだ。しかたなくワンサイズ大きな47gをセット。ロングキャリーには少し荷が重いが、胴に乗せれば飛ばすことはできる。

 ポイントは砂利が残るエリア。満潮前後で水深は充分。これならどこからでも魚が入れる。沖のボトム付近にはコノシロも群れているようで、スレで小さなサイズが針に掛かるほど。時折強く吹く北西の風にラインを取られないようサミングしながらボトムを取り、棚を意識しながらロングジャークやショートピッチで誘う。反応がなければスローリトリーブでスイミング。周りではコノシロのスレやダツ、サゴシ?がヒットしているようだが、本命のワラサやマダカの気配はまだない。日も高くなり、時計を気にしながらのキャスティングが続く。

 7時を過ぎた頃、東から10羽程度の海鳥がこちらに向ってくる。旋回はするものの海に突っ込む気配はない。いくつかの海鳥の群れが通過していくなか、私の東側のアングラーがロッドを煽った。突然腰を屈め、何かの引きに対応している。喰ったか?しかし直ぐにロッドのテンションは無くなった。スレのコノシロか?正体が解らなかったので気に留めることなくキャスティングを続け、ジグをスイミングさせて手前のブレイクまで引いてくると、何かが喰った。当たりは小さかったが、トルクフルな引き。少しではあるがドラグを出すので大型のマダカだと思っていた。慎重に寄せに入るが、ブレイクからはなかなか寄らない。しばらくすると小刻みに首を振るような振動が伝わってきた。これは青物だ。ますますランディングが慎重になる。波の切れ目からブルーグリーンの背中と黄色い鰭が見えた。ワラサだ。実は2年ぶりの魚。バラスわけにはいかない。寄せ波に合わせロングキャリーのバットパワーで一気に寄せ、ランディングする。獲った。リベンジャーの48gを丸呑みし、テールフックはエラの奥に掛かっていた。70cmに少し足りないが、ワラサと呼べるクラス。早速写真を撮ると、車に戻り職場に向った。群れは時折ボイルをしながら西に向って行ったがもう時間が無い。後ろ髪を引かれる思いで車に乗り込み職場に向った。



■ これからの遠州灘

 北西の風が強まる冬型の気圧配置により魚達の活性が高まる。この風により遠州灘サーフの波は抑えられ魚が接岸しやすくなる。朝マズメはもちろんのこと、ベイト次第では日中でもナブラが立つ。

 この季節、青物を狙うアングラーの気持ちはいつも浜にある。おちおち浜から離れられない。どこかで出てはいないか?各地の釣果情報を便りに群れやベイトの位置を予測し、プランを組み立てる。このサーフキャスティングゲームは年によってムラはあるものの、年内いっぱいこの地方のサーフアングラーを熱くさせている。私も限られた時間ではあるが年内は朝活に、週末にほぼ毎日浜に出てこのゲームを楽しむつもりだ。鰤クラスの大型を目指して。


● マイタックル

◇ロッド スミス ブローショットロングキャリー BS−LC100
         ショアジガー SJS−100/60
◇リール シマノ ツインパワー SW 4000―XG
◇ルアー スミス メタルフォーカス 28・40g
    スーパーウルムスーパーサージャー
   ドラゴンサラナS ハルカ145S・F飛烏賊HF
   リベンジャーシェル37g 48g
◇ライン ヨツアミ JIG MAN 1.2号



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