冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2016 遠州灘釣行記(伊良湖岬番外編) 》


■ 今秋までの伊良湖岬

 今年の遠州灘は、早くからヒラメの良型が釣れ始めているものの、マダカ(シーバス)や青物の接岸は例年よりも遅れているように思われる。水温がいまだに高く、アブコ(ブリの若魚)の情報も聞こえてこない。そんな少し遅れ気味の中、10月から岬の先端地区で青物の情報収集のための朝活(釣り)を開始した。


■ タックル&ギア

 昨年は10kgクラスが多数確認され、先端地区は鰤フィーバーとなったが、相手は気まぐれな青物。去年同様大型の回遊があるかはわからない。しかし充分に準備して挑まなければ出会うことはできない。そこで昨年までのショアジガー60 SJS100/60に加え、パワーアップ版であるショアジガ−80 SJS100/80を確保した。外観上の大きな違いはないが、大型のポッパーやペンシル、80gまでのメタルジグまでがストレスなくキャストでき、パワーには大きな違いがある。ペンシル系もこれまで以上のロングキャストが可能になり、優れた道具は人を助けてくれることを今更ながら実感した。

 強化したのはタックルだけではなかった。万一の事態に備えウエットスーツを着用し安全性を高めた。ポイントの選択肢が増えたことで魚との距離はさらに縮まった。

 ラインも大型に備え、PE2号を300m。これにナイロンのショックリーダー50LBを結束。このラインストックを確保するためリールもシマノのツインパワーSW6000番を新調し、着々と準備を進めた。

 ルアーも波や風の状況に合わせ、150mm前後のペンシルポッパーやシンキングペンシル、メタルジグやバイブレーションにいたるまで、遠投の効く様々なルアーを確保した。実績のあるサーディンラン、ドラゴンサラナに加え、飛烏賊、ベイビーランブオーなどのペンシル系、A-CUPなどのポッパー、サラナやハルカのミノー系、ベイブル、メタルブレードなどのバイブ系、最後に定番のメタルジグ、メタルフォーカスをボックスに詰め、海況やベイトの状況、ポイント等で使い分けながら攻略していくつもりだ。


■ ポイント

 はっきりいって気まぐれな青物。昨日良くても今日いいかどうかはわからない。そこがこの釣りの魅力であり楽しさでもある。遠州灘をホームとしているので、東は御前崎から西は伊良湖岬まで。特に渥美半島の太平洋側の「表浜」と呼ばれるサーフや、伊良湖岬の先端部や港周り、三河湾側に回り込んだ湾口部を主戦場に青物追っている。

 特に伊良湖岬の先端部は、昨年秋口から年内にかけて大型の鰤がキャッチされている。パターンと呼べるものは無く、とにかく気配を感じたらキャストするしかない釣りだ。ナブラや鳥山で釣れることもあるが、大型ほど小さな群れで回遊しているようだ。朝夕を中心に日中であっても喰ってくることがあるため、本当に気が抜けない。

 一方表浜エリアのサーフはワラサが中心で、比較的大きな鳥山を従えた群れでの回遊が多いようだ。年末が近づくころには小規模ながら10kgクラスの大型の鰤も回遊したようで、こちらも目が離せない。

 因みに以下の画像は、伊良湖岬先端地区の表浜や港湾部、湾口部の画像。この他伊良湖岬の先端から御前崎までのサーフ、いわゆる遠州灘全体が全てポイントになる。






■ 青物の接岸

 昨年は10月の2週目に青物接岸があったが、今年はどうなるのか?地域の仲間と連絡を取り合いながら情報収集していると、沖では既に10kgクラスの魚が釣れ始めていた。確かに沖合に遊漁船の船団が形成され、豪快な青物の釣りを楽しんでいるようだった。岸からも沖合のナブラや鳥山が遠目で確認できるようになり、接岸はいよいよ時間の問題となってきた。

 10月中旬、先端地区から速報が届いた。その便りは伊良湖岬からだった。それも外洋側でなく、半島を回り込んだ湾口部からだ。西の浜と呼ばれるサーフから、トップの誘い出しによるもので、にわかに先端地区が熱気に包まれた。その後散発の釣果は届くものの、昨年のような爆発力はない。気温、水温ともまだ温かく、これが青物の接岸を遅らせる要因ではないかと仲間たちと話している。


■ 水温低下

 10月に入り先端地区には通っていたが、海は10月中旬まで水温が高く、ウエット着用では少し暑かった。しかし秋の深まりとともに気温が下がり始め、11月の初めにはいよいよ最低気温が10度を下回った。ウエットスーツに入り込む海水の温度も冷たさを増し、北西の風に吹かれると流石に寒気を覚えた。釣果が報告されたものこの気温や水温が下がり始めたころからであった。

 10月末には北西の風が吹く中、岬周辺ではマダカが好調に釣れ始め、その群れの中に12kg、メータ超えの巨鰤も混じっていたようだ。バイブレーションで捕獲されたこの魚が水面に姿を現した時、子豚が水面に現れたのか?と勘違いするほど巨大な魚であったと報告されている。その後釣果があちこちから届き本格的なシーズンの到来を実感した。


■ 11月4日 荒れた海で

 10月末のタイミングでは、釣友も今シーズンの初物となる8kgクラスの鰤をペンシルベイトでキャッチした。次は私の番かと期待を抱いて挑んだ11月4日。この釣友と同じポイントに入ることとなった。彼は湾口寄り、私はその反対に陣取った。

 ここは伊良湖港からの沖の潮目が岸寄を流れるか否かで大きく状況が変わる。朝まずめの時間帯に、潮の動き出しやベイトの接岸が加わると更に状況は好転する。残念ながらこの日の潮目は岸寄りを流れていなかった。前日から吹き続いた北西の風で水面は少しうねりが残っていたため、ハイフロートのペンシルでは厳しい状況だった。そこで水噛みがよく、アピールの高いA-CUPで活性の高い魚を狙っていく。波がある状況でもペンシルにはアタックしてくると聞いていたので、特に水から飛び出さないように気を遣いながら、水中をダイブさせて水しぶきを立て、バイトを待った。しかし波と波の間隔は相変わらず短く、高低差もあるため引き辛い。次に水面直下を得意とするペンシルであるベイビーランブオー、飛烏賊F、サーディンランSSで水面には出るのを嫌った沈みぎみの魚を狙っていった。


■ マグナムサージャー

 潮は大潮のあとの中塩で満潮は8時半ごろ。7時30分を過ぎても水面は収まる気配は無く、荒れ続けた。満潮が近いこともあり潮も充分に流れているようには見えなかった。ペンシルの動きをぼんやりと目で追いながら「今日の朝活は何事も無く終わってしまうのか?」と諦めのムードが漂い集中力を失いかける。そろそろ朝活も終了時間となった。今日の締めくくりに少し沈めてみようかとルアーをマグナムサージャーのチャートバックに変更した。

 このルアーは昨シーズン、マゴチでいい思いをさせてもらったルアーで、相性は非常にいい。昨年同様今回もアシストフックをダブルで噛ませた。フルキャスト後に少し沈め、リフト&フォールで攻めていく。狙いは表層からミッドレンジの少し沈みぎみの魚。ゆっくりとしゃくりあげながら表層まで浮かせる。ここからフォールを入れ、ひらひらと弱った小魚演じさせバイトを誘う。時折リトリーブを挟み、サージャー特有の尻ふりアクションで変化を加え攻め始めた数投目。2度目のリフト&フォールで表層付近からのフォールに小さなあたりがあった。

 「あ!」すぐに違和感を覚え、ラインを張って聞きあわせをするとロッドに生命反応が伝わってきた。「喰った!」魚はすぐに沖に向かっていきなり走り出した。あまり大きな当たりではなかったので、何が喰ったのかよく分からなかった。それが良かった。冷静にドラグの強さを再度確認し、少し強く感じたのでドラグを緩めると魚の走りは加速度を増した。力強い走りでラインが引き出されていく。ラインはタップリある。しっかりと沖で走らせた後に、走りが止まったら少しずつ寄せればいい。本当に落ち着いていた。何度かこのやりとりを繰り返し、少しずつ手前に寄せた。走りの質や力強さから相手は鰤であることは確信していた。「80cmは超えているか?」「どこでランディングしようか?」様々なことが脳裏をよぎったもののあせりは無かった。気がかりなのは掛り処だけだった。

 隣の釣り師にファイト中であることと、魚の位置を伝えると状況を理解し無理なキャストは控えてくれた。左端にいた釣友も私のヒットに気付き、ヘルプに来てくれた。これで安心してランディングに持ち込める。ここからは落ち着いてファイトにのみ集中した。

 強い魚の引き込みに耐えていると、魚は徐々に水面に浮き始めた。「でかい!」水面に淡い緑色の背中を見せた鰤は、本当にデカかった。充分に沖で疲れさせたので岸際で大暴れや急な絞り込みは無かった。ただ岸に寄りたくないようで、行き場を失った魚は左に向かって進み、このままではテトラに入られてしまう危険があった。この時「テンションを緩めて沖に出して!」釣友のアドバイスが聞こえた。とっさにリールのベールを返し、サミングしながらテンションを緩めた。魚は自由になったと勘違いし、再び沖に向かって泳ぎだした。沖に魚が出たことを確認し、今度は危険の少ない右端に誘導しながらランディングの間合いを計っていく。手前の沈みテトラの状況を確認し、一番リスクの少ないと思われる現在の立ち位置でランディングすることを釣友に告げた。彼は直ぐに手前のテトラに乗り移り、ランディングの準備をしてくれた。足元のテトラで浮かせたときの一瞬の間で、魚がテトラに潜り込もうとする気配を見せが、この時も適切な釣友のアドバイスで再度リスクは回避できた。声を掛け合いながらタイミングを合せて手前に寄せ、最後はショアジガーのパワーでなんとか浮かせてランディングに持ち込んだ。


■ ショア鰤

 「獲った!」重さは約9.5kg。長さは95cm。10kgには届かなかったがショアから巨鰤を獲ることができた。鰤の口元にはシングルフックがガッチリ入り、フッキングは完璧だった。もう1本のアシストも顎の下にしっかり掛り、恐らく外れることはなかったと思われる。ただ表層に出てくれるほど活性は高くはなかったようだ。

 ファイト時間は約8分程度。巨鰤のパワフルなファイトを充分楽しむことができた。ただこのサイズが掛ると1人でランディングすることは非常に難易度が高く、今回経験豊富な釣友の協力もあって無事ランディングができた。もし1人だったら獲れていたかどうかわからない。自分の時合を捨ててまでアシストしてくれた仲間と、私のルアーに喰ってきてくれたこの魚に感謝した。



■ これから

 昨年は12月中旬ころまでは先端地区での釣果は確認している。その後の釣果は充分な情報がないため推測に域を出ないが、恐らく釣果はあったと思われる。一方表浜のサーフエリアでは、年末までは単発ではあるものの大型の鰤がサーフでキャッチされ、多くの釣り人で賑わった。今年もシーズンインから大型の釣果が報告され、数は昨年ほどではないものの、サイズは去年を遥かに超えている。今後このまま回遊が続くかどうかはわからないが、年内は渥美半島を中心にマダカ混じりで狙うことができそうだ。

 今年も遠州灘、渥美半島の表浜からは目が離せない。岸から10kgクラスとやり取りできる機会はそうあるものではない。私も当分睡眠不足と闘いながら、この海に通い続けることになるだろう。次にこのレポートをアップするときは10kgクラスの魚を紹介できることを夢見て。


■ お願い

 天候や海の状況を事前に確認し、ライフジャケットを必ず着用したうえで安全には充分に留意して楽しんで欲しい。釣り場では釣り座をめぐるトラブルも発生しているようです。気持ちよく釣りをするためにはマナーを守り、ビギナーの方は経験者やベテランと一緒に出掛けて下さい。なおその際には必ず磯タモなどのランディングツール持参でお願いします。


● マイタックル


◇ロッド スミス   ショアジガー SJS100/60 SJS100/80
ブローショットロングキャリー BS-LC100
◇リール シマノ   ツインパワーSW 4000XG 6000HG ステラ4000XG
◇ルアー スミス  マグナムサージャー  ドラゴンサラナ  サーディンランSS・F  飛烏賊HF F S  A-CUP  ベイビーランブオー  サラナ147MAX  ハルカ 145F・S  メタルフォーカス 28g 40g 60g 80g  ベイブル90HS  ハイパーブレード 
◇ランディングツール スミス スミスグリップ2700
◇ライン  ヨツアミ  G-soul SUPER JIGMAN X4 1.5 2号
G-soul WX-8 1.2・1.5号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2号
◇ショックリーダー  ナイロン 30・35・40・50lb



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