冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2014 九頭龍川釣行記:その2 》


■ 苦しさの中から

 サクラマス釣り師はだれもが皆、魚の顔を見るまで落ち着かない日々を過ごしていることだろう。平年並みの釣果ならば焦ることもないのだが、解禁から好釣果に沸く今年の九頭龍川では、釣果のない釣り人の心理状態は厳しいものがある。仲間の釣果を手放しで祝福できた解禁当初とは違い、4月に入ったころには仲間の釣果ですら素直に祝福できなくなる。当然釣りにも影響が出始め、ますます負のスパイラルに陥りやすい。まさに3月末の私はその状況に陥っていた。「何かきっかけが欲しい。」そんな心境であった。

 今思えば先週の釣行初日、下流の瀬での小さなあたり。これが私のターニングポントであった。解禁から全く応えてくれなかったこの川が初めて手を差し伸べてくれた。釣れた訳ではない。小さなあたりだけだがどれだけ嬉しかったことか。これで少し落ち着くことができた。後ろ向きになっていた自分を奮い立たせ、前に向って進むきっかけになった。この繰り返しが釣り人、人としての強さに繋がると考えており、周囲にこの釣りを「九頭龍道場」と言い切って憚らない所以でもある。

 多くの苦労の末に素晴らしい魚に出会う。まさに今年初のサクラマスは、久しぶりに手が震えるような喜びを与えてくれた一尾であった。この感動があるからこそ、この釣りが止められないのだろう。

 さあ今週も平日に休みが取れた。九頭龍道場に出発だ。そう思いながら深夜に車を走らせた。


■ 情報交換

 今回はここ数年メインの釣り場としている、8号線上流部の水道局に入った。平日だがめぼしいポイントには釣り師の姿があった。私らしく竿抜けや攻められていないポイントをチェックし、水道局の開きから瀬肩のかけあがりに入ることにした。水位は先週よりも随分下がり、私の好きな水位。深くても水深2m程の穏やかな流れをチェリーブラッドMD90で流したものの反応は無かった。

 居合わせた地元の知り合いに最近の状況を聞くと、「魚のつき場が変わったのでは?」とのことだった。気温の上昇により瀬着きの魚が増えたのか?確かにWEBの情報からも瀬のポイントでの釣果が多く報告されるようになった。水位低下もあるだろうが、ヒットルアーもMDからフローティングとレンジが浅くなってきたようだ。連日釣果を上げている彼の言葉には説得力があった。


■ ランガン

 せっかくの平日釣行。あまり粘ることはせず、普段入れない有望ポイントをランガンしながら効率的に攻めた。水位も下がっていたのでチェリーブラッドMD90とMD90Sがローテーションの中心。状況によっては新しいSR90も使ってみよう。狙いは高活性な魚。まずは水道局、福松大橋下流など、流れの中に明確に地形の変化のあるポイントに高活性の魚を求めた。しかし早朝から数か所攻めたが反応は無く、時刻はすでに10時になっていた。


■ 8号線

 次に8号線に入った。まずは土管の深みから橋脚にかけての瀬肩と思っていたが、先行者がいたため断念。そこで今年結果が出ている橋脚周辺を攻めることにした。高水位では流が早く攻め難いポイントだが、今日はいい感じ。右岸寄りを早く強い流れが通り、底質は小さめの石や砂利。魚は一気に遡上するか、流芯脇の僅かなタルミやかけあがりにつくだろうが、いつまでも居られるポイントではない。橋脚の深みに潜んでいた魚がどのタイミングでこの瀬を通過していくか。これが勝負の分かれ目だろう。


■ SR90

 まずは瀬の頭から表層をチェリーブラッドSR90で探っていることにした。SRは昨年ずっとテストを繰り返していたルアーだ。チェリーブラッドシリーズは水深や流れなど川の状況に応じてディープ、MDS、MDが用意されていたが、深みが少なくなった河川や東北の中小河川向けにシャロー系を作ろうと企画されたモデル。残念ながらテスト中に結果は出せなかったが、このルアーが活躍するのはこれからで、水位の低下と瀬つきの魚が多くなる禁漁までが、SRの本当の真価が発揮される時期であろう。

 曇り空で光量が少ない今日、大好きなチャートオレンジでこの瀬を攻めることにした。

 潜行能力はせいぜい水深1mまでで、アクションはタイトローリング。MDよりも大人しく小刻みに震えるようなアクション。流れへの適用力と飛距離を最優先し、確実に荒瀬や複雑な流れの中で泳ぎ切ることができるよう設定してもらった。この8号線の瀬は流れが強いが一本調子なので、このミノーにはいささか物足りなさを感じたが、まずは試してみよう。スナップキャストで気持ちよく飛んでいく。空気抵抗が少ないSRは、安定した姿勢で狙いのポイントに落ちていった。

 ここでは流芯を横切らせながら、緩んだあたりでターンをさせる。少しずつターンの位置をずらしながら釣り下っていく。「バイトがあるならここだよな。」そう思いながら流していった。

 早朝は地元勢が必ず攻めているだろう。「魚にはプレッシャーが掛かっているだろうから、居ても喰わないだろうな。」濁りが強い訳でもないが、チャートオレンジを選んだのは、使われていないと思われるカラーで目先を変えようとの考え方があった。


■ SRフィッシュ

 30mほど釣り下がり橋脚の手前にきた。油断をするとターン後に橋脚の障害物に引っかかってしまう。橋脚周りは深く、下流の瀬から遡上してきた魚が休むには恰好の場所。ここに潜む魚のスイッチがいつ入るのか?そのタイミングで流すことができたらと思いながら、橋脚の深みが絡む瀬の終わりの緩流帯をSRで探り始めた。数投目だった。いきなりドラグが唸りを上げ、ラインが下流に走った。このまま走られては木に引っ掛かってしまう。直ぐにスプールを押さえ、ロッドで橋脚の障害物を避けながら反対側のプールに誘導していく。魚は水面でローリングしながら暴れ、ジャンプを繰り返しながら岸に向っていく。あまり浅瀬でファイトさせると、今度は川底でフックが外れてしまう。ドラグを締めながら再び深みに誘導し、やりとりを始める。魚は激しくローリングし、リーダーを体に巻きつけてしまったようだ。魚は弱まる気配はなく、このままでは針先や鋭い歯にリーダーが当ってしまう。フックが外れるようないやな感触もラインを通じて伝わってきた。「やばいな。」意を決して強引にランディングの体制に入る。フックの掛かり方を確認できないまま再び浅瀬に誘導し、一瞬浮いた瞬間に間髪いれずに掬い上げた。

 リーダーを体に巻きつけ、痕が体に残ってしまったが、フレッシュランと思われるやや小ぶりな魚。堂々とした体高がありプロポーションは悪くない。SRのベリーのフックはしっかりと蝶番の一番いいところに掛かっており、プライヤーで外すにも苦労するほどだった。

 前回同様流れに乗せて送り込むこの釣り方では、魚からのシグナルはドラグの音だった。あたりを殆ど感じることなくラインが走る。「こんな掛かり方をするんだ。」と再度確認できた。恐らく今回も何の躊躇のなくSRにバイトしたのだと思われる。



■ これからの九頭龍川

 GWに向けて水位が下がり、田植えの濁りも入るため釣りにくくなると思われる。ただこの濁りも魚が少し慣れてくると、私自身は充分狙えると考えている。気温の上昇とともに魚は背や速い流れのシャローに差してくる。水位が低い分、魚との距離は近くなり、早期のようにボトムにベッタリといった状況は少なくなると思われる。

 流れの中で、MDやSRを使った流れの中でのプラッギングが楽しめるのもこの時期である。少し小ぶりだけれどもファイトの素晴らしいサツキマスの遡上も始まるだろう。ディープからサーフェスへとますますゲーム性の高まる九頭龍川のトラウトゲーム。まだこの川の素晴らしい魚達に出逢ったことのない釣り人の皆さん。今年はチャンスですよ。九頭龍川で楽しいトラウトプラッギングゲームを始めてみてはいかがですか?




● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−83MSD
◇リール シマノ ステラ 4000
◇ルアー スミス チェリーブラッド DEEP90 MD90S MD90 SR90 MD82 MD82S
   DDパニッシュ 95F 80S
   バッハスペシャル18gベイティス17・22gピュア18g
◇ライン ヨツアミ PE G-soul WX8 1号
◇リーダー リーダー バリバス ナイロン 20LB
◇ライン スミス チェリーネット サクラ



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