冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2015 九頭龍川釣行記 》


■ NEW TACKLE

2015シーズンに挑むためのニュータックルが揃ってきた。

【チェリーブラッド90シリーズ 新色 TMブナチャート】

今季チェリーブラッド90シリーズに6つの新色がリリースされた。この新色はチャート好きの私の要望が通り、遡上鱒の婚姻色をモチーフにチャートリュースでデザインされたニューカラー。この色がチェリーブラッド90シリーズにフルライナップされた。これまでディープにチャートリュースが無かったため非常に嬉しく、深場ではローテーションの柱になることだろう。

【チェリーブラッド SR90SS(スローシンキング)】

昨年九頭龍川、手取川の強い流れでテストしてきたモデル。いよいよ今季リリースになった。早瀬の大型サクラマスをターゲットに流れの適応力を高め、送り込みでシャローの地形変化や、レンジを攻め分けられるようテストした結果、スローシンキングモデルでのリリースとなった。TMブナチャートによる大型サクラマスが、今季の目標になっていることは言うまでもない。

【NEW チェリーネット サクラ(L)】

大型のサクラマスを躊躇することなく一気にランディングに持ち込むことができるチェリーネットが、銘木をあしらった高級感溢れるものにモデルチェンジ。早くこのネットを使いたい。そんな気にさせる逸品だ。

【B&F(バック&フォース) 13g】

解禁1週間前に届いた出来立てのニュースプーン。渓流モデルは既に発売されているが、今季本流用の開発を進めており、そのテストサンプルが届いた。開発者曰く、「面白い泳ぎをするので見てほしい。送り込みを多用する冨安さんにはぴったりですよ。」と言われて半信半疑で釣り場に持ち込んでいた。まさに金属片。アワビホロに赤色のペイントマーカーフィニッシュは手作り感満載。まずは試してみよう。

 何時になく多くのニュータックルが手元に届いた。開発に関わったものもあるので解禁が待ち遠しかった。


■ 解禁日前日

 この釣りを始めて20年近くなるが、前乗りしたのは今回が初めてである。タックルの準備も万全。数年前まで“解禁はお祭りのようなもの”だったが、今季は「魚を獲りにいく。」そんな気持ちで臨んでいた。

 近年解禁から釣果が期待できるようになり、福井市内の釣り具店でも“ギラギラした目”の釣り人たちで溢れ、彼らも確実に魚を獲りに来ていると感じられた。大雪による荒天が予想される解禁日だったが、全国各地からその筋の強者たちが河原から明日の下見をしている。真剣な彼らの姿を見ると、改めて気が引き締まる思いであった。

 解禁日前日は午前中に現地入りし、小雪が舞う中で第一解禁となる高速下流から高屋橋までを実際に歩いてポイントチェックをした。慣れない長靴で10km近く歩いたために、左足のかかとに靴擦れを起してしまったのは誤算であったが、流れや地形の変化、底質などを事前に把握できたのは大きな収穫だった。

 夜はいつものメンバーでお互いの健闘を誓い合い、解禁前夜を過ごした。あとは釣るだけ。こんなに用意周到に釣り場に入るのは初めてで、2015シーズンへの高まる想いとともに、早めに寝袋に包まった。


■ 川の変化

 近年どの河川も平坦で流れに変化がなくなってきている。深みやメリハリのある流れが減少しているのではないだろうか。ゲリラ豪雨に代表される急激な増水への対策として、雑木を伐採し流れを良くする河川改修の実施で釣り場へのアクセスは改善されたが、魚たちが身を隠すための逃げ場が少なくなった。

 下流域の九頭龍橋から高屋橋は見事に開けた河原に生まれ変わり、川底も重機で均されたように変化の少ない広大な流れが多くなってしまった。ただこの工事により釣り場は間違いなく増えており、オーバーヘッドのフライフィッシャーには反対に歓迎されているに違いない。サクラマスなど本流のブームによりこの釣りを目指す釣り人が増加傾向にあるなか、多くの人で釣り場が共有できることは望ましいことだが、人的プレッシャーが高まることは悩ましい。川の表情が大きく変わりつつある九頭龍川。2015年この劇的な変化のなか、さて何処で解禁日を迎えようか?これが問題である。


■ 解禁日の攻略法

 充分な下見と解禁までの水位変化(増水)から、“魚はエリア上流部までは差していないだろう”との仮説のもとに、次の戦略で臨むこととした。

@ポイントは8号線から下流
Aディープは捨て、狙うは水深1.5m程度のシャローエリア
B日が昇り気温が上昇する9時頃から午前中が勝負

 解禁当初はボトムにべったりと言われているが、この低活性の魚を狙うのは、「縦(水深)」と「横(飛距離)」の両面を攻める必要があり、探る範囲が広いため効率が悪い。そこでディープは釣り人の集中と釣りが遅くなることから敢えて狙わないことにした。解禁直後の擦れていない魚を、プレッシャーの低いシャローで効率よくスピーディーに攻める。より変化のある場所を丹念に攻め確率を高める。活性の低いディープの魚は捨て、「縦(水深)」を一度に攻め切れるショートリップのミノーで、扇状に隈なく全体を探り活性の高い魚だけを拾う攻め方で挑んだ。 メインルアーはチェリーブラッドSR90・SR90SSを中心に、少し流れが強くレンジが深い場所はMD90・MD90Sでフォローを入れる。

 JR鉄橋から天池までの間で、水深が浅くプレッシャーの低い竿抜けを本命と位置付け、足で稼ぐ釣りを展開することにした。


■ 2015 九頭龍川解禁

 解禁日の朝、車には15cm程の積雪。予報どおり雪の中での解禁になった。天候も少し荒れるようで厳しい1日になりそうだ。夜明け前にポイントに入ろうと5時に目覚ましをかけていたが、この雪で気持ちが少し萎え、結局朝寝坊をしてしまった。釣友とともに冷えた体を暖かい食事とお茶で温め、それぞれ釣り場に向かった。

 九頭龍橋付近に車を止め、釣り場に入ったのは8時前。右岸は護岸改修が終り、足場のいい釣り場になった。手前の流れは穏やかで適度の深みを保ちながら流れ、ここには10m間隔で釣り人が並んでいる。「入れないな。」このポイントは諦め、下流に歩き始めると大好きなJR鉄橋前の沈みテトラに人影が無かった。右岸からは遠浅の地形で魅力的ではなのだが、ディープウェーディングで流芯の両サイドの地形変化は充分探れる。極寒でのウェーディングを嫌ったのか?もう攻められた後なのか?このあたりは不明だが、解禁日のこの時間に入れるのは奇跡的だった。「ついてるな。」魚を獲った獲ったわけでもないが、こんないいポイントに入れたことに何か幸運めいたものを感じた。手早く準備をして釣りを始めた。今年もこの河原に立てることに感謝しながら。


■ タックル

 ロッドはインターボロンIBXX-83MSD。インジェクションのミノーを中心にスプーン、ディープを操るには丁度いい硬さ。ハンドメイドのバルサをメインに使っていたころは、もう少し柔らかなロッドが好みだったが、ミノーにキレのある生命感を与えるには少し張りのあるこのシリーズが丁度いい。現在シーズン中ほぼこのロッドで通し、初夏の上流域で川幅が狭くなった時に、IBXX-77MSDをサブで使っている。結んだのはチェリーブラッドSR90SS TMブナチャート。やはり最初はこのルアーで攻めたかった。


■ JR鉄橋

 九頭龍橋の右岸側からJR鉄橋左岸に流れの筋が走り、この左右両サイドのかけあがりや流れの変化を流し終え、次に橋脚前の沈みテトラを探った。やる気のある魚が着いていれば、すぐに反応は得られるはずだ。チャート⇒シルバー⇒ゴールド⇒パールのカラーローテーションと、MD90SやDEEP90で縦方向にも探りを入れ、この間を攻め切ったが、残念ながら反応は無かった。

 周りはどうかと周囲を窺がうとJR鉄橋からビニール袋を抱えた釣り人が歩いてきた。「獲ったな。JR下流だったか?」その釣り人を目で追っていると突然携帯が鳴った。釣友からだった。トラブルで小休止していた時、真下に入った釣り人が1投目でサクラマスを獲ったとのこと。60cmには足りないが、綺麗なサクラマスだったようだ。今そのポイントが空いたので来ないか?とのお誘いであった。彼はこの悔しさを誰かに聞いて貰いたかったのだろう。「残念だったな。まだここで釣りをするよ。」と慰めの言葉とともにこのお誘いは断った。行きたい気持ちはあったが、これからいい時間なので釣りをしたかったし、なにより魚は自分の足で探したかった。長く釣りをしていると、この思いに共感できる釣り人は多いだろう。趣味だからこそ拘りも大事なのだ。素直になれればどんなに楽か。こう感じるときがしばしばあるが。(笑)


■ いい時間に

 九頭龍橋からJR鉄橋間の2度目の流しを終えると、時刻は9時近くになっていた。いよいよいい時間だ。本命と考えていたポイントに移動するときがきた。ウォームアップは充分だった。JR方面からは徐々に釣り人が車に戻っていく。夜明け前から釣り場に入っていたのだろう。時折吹雪く厳しい寒さの中、釣れない状況にしびれを切らしてのポイント移動なのだろう。天気は時折日差しが差すものの、回復する兆しはない。ただ早朝の混雑は徐々に解消され、JR下流も少し待てば入れるようになってきた。

 高台から釣り場を眺めると、JRから続く瀬の一番おいしそうなポイントに釣友の姿があった。「やってるな。離れられなくなったな。」これからが勝負の時間なので声を掛けるのは遠慮し、天池橋方面のシャローエリアに向かう。予想通りJR下流の落ち込みから左岸のテトラ帯のディープエリアには釣り人が並んでいた。誰しも解禁当初は流れの絡んだディープのボトム附近を、スプーンやディープミノーで狙いたくなるもの。そのまま深場を通り過ぎ、流れが開き始める天池橋上流のポイントに入った。

 中角水位計が50cmの状況で、水深1.0〜1.5m程の水深。流れの中央にミオ筋らしき流れが通り、その手前に僅かながら地形の変化もある。水中には流れてきたテトラなどの障害物が沈んでおり、小さなヨレもある。川幅は広いのだがSR90・90SSの飛距離があれば、怪しい流れを扇状に攻め切ることができる。天池橋のすぐ上流には数名の先行者がいたが、大きな地形少ない平坦なこのポイントは、やはり竿抜けになっていた。

 実は2014年5月の渇水期にサクラマスを獲ったポイントで、昨年の沈みテトラは今年もしっかり残っており、その前後約100m程を丹念に探っていくことにした。


■ 天池上流

 メインの流れは中央からテトラがある左岸寄で全体的に穏やか。右岸は遠浅で左岸にかけて深くなっている。中央付近のミオ筋は、天池橋に向かって全体に開けていくにつれてぼやけていく。サクラマスは開きの中央を通り、左岸のテトラ寄りかミオ筋を遡上ししてくると考 えられる。そのルートの一つである左岸のディープを探るには時間が足りないため、中央の僅かな地形変化と障害物周りに付く魚のみを、SR90SS・SR90で狙っていった。地形と流速に合わせてルアーを選択し、SR90SSは少し送り込みながら中層を、SR90は流れが緩くなる開きの表層をナチュラルドリフトで流していく。カラーはここでもTMブナチャートからスタートし、ローテーションしながら反応を待った。


■ B&F(バック&フォース)プロト 13g

 しばらくこのパターンで流したが何の反応も得られず、攻め方を変えようとベストに手を伸ばした時、プロトのスプーンのことを思い出した。「試してみるか。」この流れならば13gの重さも丁度いい。「さてどんな動きなのだろう?」そう思いながらバック&フォース13gを結んだ。

 真鍮(銅?)の金属片を流芯の向こう側にキャストし、竿を立てながらラインを目で追った。水中に鈍く輝く金属片は流れを横切り、小刻みな振動とともに手前に流れてくる。ピュアなどカップのあるスプーンより波動は弱いが、その動きにはキレが感じられた。沈下速度もあまり早くなく、水深1.5mの止水で約2秒。着水点から随分流されながらボトムを取るようなスピードなので、ロッドを高くかざせばドリフトさせながら流すこともできる。まるでローリングが強めのバルサのシンキングミノーのように、中層をフラッシングさせながら流すことができそうだ。そんなミノー感覚で操ることができるスプーンだった。「これは使えるかも。」予想を遥かに超えた泳ぎっぷりと使い易さから、そのポテンシャルの高さに興味が湧き、解禁日なのにルアーテストに夢中になってしまった。


■ まさか

 しばらくプロトに夢中になっていたが、気がつくと去年サクラマスを獲った沈みテトラの近くまで下っていた。流し終えたスプーンが、ターンをしながらテトラの前をかすめながらゆっくりと泳がせてくると、コンと小さなあたりとともにルアーが引き込まれ、首を左右に振りながら”イヤイヤ”するサクラマス特有の様子がラインから伝わってきた。「えっ!」

 一瞬何が起きたか気が動転してわからなかった。次の瞬間、緩めにセットしていたステラのドラグが逆転し、ジリジリと小さな音をたてながら糸が引き出されていった。魚は流れの真ん中に走り、その後テトラにゆっくりと向かっていく。「喰った!」やっとこの時サクラマスが掛ったことを理解し、魚の存在を確認するように優しく、且つしっかりと合わせを入れながら、ドラグを少し締め込んだ。テトラに走る魚の頭をゆっくりと上流側に向け、引き出されたラインの回収にかかる。テトラさえかわせば障害物は何もない。掛りどころを確認し、魚が疲れて浮くのを待つだけだ。顔を出さないようにロッドを低く構えながら不意の走りに備え、適度なラインテンションを保ちながらゆっくりと後ずさりし、魚を岸際に寄せる。

 数回の走り込みをインターボロンのバッドパワーでいなしながら数分が経過したとき、少し早目に背中のチェリーネットを用意した。早くランディングしたい。そんな気持ちが強かったのだろう。初めての解禁日のサクラマス。それもプロトで。バラシたくない気持ちから冷静さを失っていたのだろう。用意したネットは下流に流され、慌てて追いかけると緩んだラインテンションに今度は魚に走られる始末。まるでビギナーのような格好悪いランディングになってしまった。

 こんなドタバタがあったが魚はある程度で止まってくれたため、再びラインを回収し頭を上流に向けさせ、間合いを詰めていった。流石に魚も少し疲れたようで、おとなしく手前まで寄ってきた。よく見るとシングルフックがしっかりと顎に掛かっており、外れる心配はない。緑色とも薄紫色とも思える薄化粧を纏った白銀の魚体。いったん自分よりも上流に誘導しながらロッドを立てると、魚は静かに水面に浮き上がってきた。やっとこの時が来た。ランディングだ。張っていたラインを緩めながら魚を下流に送り込むスタイルで一気にランディング。「獲った!プロトで獲ったぞ!」58cm。体高はまずますの綺麗な魚であった。解禁日ではあったが鱗はしっかりしており、川に入ってしばらく経過した魚のようだ。早朝この上流で釣れた魚は、もう少し体高があり鱗の具合もフレッシュに近いと聞いている。早速、押えの画像を撮り、足場のいいJR下流の瀬に移動して魚の撮影をした。

 不意を突かれたことにはなったが、攻め方、攻めどころは間違ってはいなかった。下見の成果もあるが、いろいろな意味でこのプロトによるところが大きかったと考えている。いずれにしてもサクラマスをスプーンで獲ることも解禁日に釣ることも初めてで、それもプロトで獲ったこともあり感慨深い1尾となった。



■ これからの九頭龍川

 2015年のサクラマスは始まったばかり。第二解禁もすぐだ。今後どんなシーズンになるかはよくわからないが、解禁以降釣果は芳しいものではないようだ。遡上が遅れているのか?数が少ないのか?これはもうしばらく推移を見なければ判断できないが、本格遡上は例年どおりであれば3月中旬から4月中旬であろう。大型が姿を現すのも3月前半から4月前半にかけてだろうから、すべてはこれからである。昨年に比べ下流域は随分流れや地形に変化があるように感じている。上流の様子は確認していないが、川に関する情報はネット上に溢れている。事前に充分情報収集したうえで、自分なりの仮説に基づく攻め方で釣行することをお勧めする。その結果どうだったか?釣行時の天候、水位、水色、釣果のあったポイントを把握し、この状況で”どこが良く””どこが悪かったのか”を振り返ることで引き出しが増え、スキルが上がっていく。ビギナーズラックのある魚でもあるが、努力をしている釣り人は必ず毎年を獲っている。実績ポイントに目がいきがちだが、自分なりのスタイルで得られた釣果は何にも代えがたい喜びと自信を与えてくれるだろう。ぜひ貴方もこの美しいサクラマスに挑戦してみませんか?


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロン IBXX−83MSD
◇リール シマノ ステラ 4000
◇ルアー スミス  B&F(バック&フォース)プロト 13g
チェリーブラッド SR90 SR90SS MD90 MD90S DEEP90
DDパニッシュ 95F 80S
バッハスペシャルジャパンバージョン18g
 ベイティスU17・22g ピュア13・18g
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 1号
◇フック  スミス シュア−フック サクラマス 3G 4G
◇スナップ スミス クロスロックスナップ #3
◇リーダー バリバス ナイロン 20LB
◇ネット  スミス NEWチェリーネット サクラ(L)



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