冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2016 飛騨川釣行記 (その3) 》


■ 久しぶりの雨

 8月は余りの水の少なさに中旬まで釣りを控えていた。この時期産卵を意識したトラウト達は流れの中から姿を消し、深場に落ちる傾向にあると考えている。水温も上昇する盛夏は、いい結果が出ることも少ないため、妻への感謝を込めて小旅行に出たり、地域の活動に参加するなどして秋鱒に備えた。こうして猛暑の8月をやり過ごすと月末に恵みの雨が降った。垢腐れした河原に久しぶりにフレッシュな水が通い、深場や川底でじっと耐えていた魚達もやっとひと息着くことができたのではないか?そう思いながら、秋鱒の遡上を願いつつ川に向かった。


■ 濁りの入ったひらきで

 川は上流からの濁り水で増水していた。普段河原の岸際も水に浸かり表情が変わっていた。当然穏やかだった流れは荒々しいものとなり、秋鱒たちは岸際の障害物にタイトに着くか、深場に潜んで強い流れが収まるのを待っているだろう。そのため思わぬ良型が変化の少ない緩やかな流れや浅場に潜んでいることもある。この日の早朝も警戒心の薄れた泣き尺のイワナが、水深の浅い砂利底の開きから出てきた。ウェイビー50Sのチャートリュースを足元まで追ってきたので、水面に八の字を描き喰わせた。普段物陰から流下する餌を待っている彼らも、今日は大胆にも開きの真ん中の緩い流れについていた。しかし期待の良型アマゴの姿はそこには無かった。



■ ダム河川の面白さ・難しさ

 今回の濁りは支流からのものだった。今までこんな濁り方はしなかったのだが。ゲリラ豪雨で山が荒れてしまったのか?今年はこの支流が濁りの原因になることが多い。異常気象はこんなところにも影響を及ぼしている。

 飛騨川の上流域は幾つものダムで堰き止められ、降雨がすぐに水位に影響を与えることは少ない。今回も濁りと増水はダムの無い支流の合流から下流域が中心で、この上流は然したる影響は見られなかった。高根第1ダムから続くダム群の放水が局地的な水位変化を生む。この関係を理解し、何処の条件が良いかを見極めないと釣果も思うようにならないことが多い。ダム河川攻略の面白さと難しさがここにあるある。

 早朝、久しぶりの増水で期待していたが、思いのほか反応が渋かった。遡上途上の良型が動いたのではと期待していただけに非常に残念だった。次はこの水が落ち着き、元の水位に戻る少し手前の下げ水が攻め処なのかもしれない。流石にこの日の増水や濁りは、産卵を控えた彼らの望む流れではなかったのだろう。流れの安定した深場や岩陰など、ルアーが届きにくいポイントに身を寄せていたかもしれない。


■ 夕方 大型ルアーで

 山々に囲まれた高山の日暮れは早い。特に天候が優れない夕暮は本当に早い。この日も4時過ぎたあたりから、薄暗くなり始め、6時頃にはISOの値を相当高くしなければ、手振れでシャッターが切れないほどだ。50歳を過ぎた釣り師には、オートフォーカスであっても暗がりのピント合わせは厳しく、夕暮は良型が釣れても本当に悩ましい。歳はとりたくないものだ。

 日没が近づくにつれ増水や濁りも徐々に収まり、早朝激しかった瀬尻の流れはようやく釣りができるまでになり、小型のライズも見られようになっていた。しかし狙っているのは小型ではない。ささ濁りの暗がりの中で、少しでも魚たちに気付いてもらおうと少し大き目のパニッシュ70Fをラインに結んだ。まずは対岸のオーバーハングした木々の下や岩盤のエグレにルアーを流してみたが、狙われやすいポイントには魚の気配は無かった。

 そこで下流の淵に釣り下りながらやる気のある魚は居ないかと、引き続きパニッシュ70Fで表層を狙ってみたがまたも無反応。次は中層だ。テスト中のジェイドMDSのチャートリュースをゆっくり送り込み、時折ロッドを煽って変化をつけて誘ったがこれにも追いが無い。最後にD−コンセプト48MD、ドロップダイヤ 5.5gなどでボトム付近までスローなアクションで攻め切ったがなんの反応も得られなかった。


■ アクションの違い

 「居ない!」移動をしようと河原に上がりかけた時、ある釣り方が頭に浮かんだ。リアクションの釣りだ。ナチュラルドリフトで全く反応が得られないときによく使う攻略法で、ルアーを激しく動かし、低活性の魚の活性を上げて口を使わせる釣り方である。バラシが多くなる釣り方であるが、試してみる価値はある。

 そこで再びパニッシュ70Fのチャートリュースを対岸の岩盤際に打ち込み、着水と同時に激しく、早く動かしながらアピールを始めて数投目、いきなりひったくるような当たりとともにドラグが引き出された。少し沖目でのバイトであったため、良型であることは解ったが何が喰ったのかよく分からなかった。岩魚かもしれない。早く魚を確認したい思いが強かったのであろう。雑な取り込みで必要以上にラインを巻き取り、魚を簡単に表層に浮かせてしまった。側面と尾鰭に赤く朱を纏った尺超えの雄。雌らしき仲間を従え水面に姿を現した。「デカい!しまった。」その時既に手遅れだった。水面に浮いた秋色アマゴは、人の気配を感じると私の目の前で激しくローリングを始め、上手にパニッシュのフックを外して見せた。「あっ!」思わず川にしゃがみ込み、しばらく途方に暮れてしまった。


■ やっと出会えたアマゴ

 渇水が続いた今シーズン。やっと良型の秋色アマゴに出会えたのに!本当に今年はアマゴとは縁遠いシーズンである。日は落ちて谷合の淵は、私の心を映しているかのようにますます薄暗くなっていった。釣り方は合っている。そう言い聞かせながら、再びキャストを開始した。今度は少し深い棚を狙おうとDDパニッシュ65SPのTSカラーを流れの中層に送り込み、激しいアクションで誘った。

 しばらく反応のない時間が経過し、そろそろ納竿かと思い始めた時、先ほどの力強いものと異質のスピード感のある引きでドラグが出ていく。今度も良型アマゴだろうと慎重にやり取りをしながら魚を疲れさせ、慎重に浮かせてネットでランディング。27cm程のコンディションのいいアマゴであった。ベリーのフックを喰い損ね、尻のフックが背中に掛ったようで、素早い引きはこのスレが原因だった。



■ 明日につながる釣りを

 この初秋を思わせる8月末のこの時期、増水による強い流れを嫌い、水深のある淵に身を潜め遡上のタイミングを待っていたのだろう。産卵を意識した魚たちは食性が徐々に減退し、積極的な捕食をすることは少なくなる。そのため増水からの下げ水であっても、初夏ほど著しく活性が上がることはなかったようだ。低水温を好む魚達だが急激な水温の低下への対応ができなかったのかもしれない。そのため全体に活性が低く、相手をしてくれるのはイワナや小型の個体ばかりであった。この状況下でいい反応があったのは、夕マズメの時間帯に、水深がある緩やかな流れで、リクション重視の大き目のルアーによるものだった。

 トラウトシーズンも禁漁が近づくにつれ、穏やかな緩い流れの中や水深のある淵で産卵の時を待つ個体が多くなっていく。ルアーに反応が悪くなった彼らとの距離を縮めるためには、ルアーの移動距離を極力少なくし、激しいアクションによるリアクションの釣りが有効であることを奇しくも証明する形となった今回の釣行。次はもう少し水位が下がった状況で、深場から動き始めた大型を狙うことができるタイミングで河原に立ちたい。そう思いながら増水気味の薄暗い流れを後にした。


● マイタックル


◇ロッド スミス インターボロン IBXX−53MTH IBXX−60MT
マジカルトラウト ULフラッシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
シマノ ツインパワーC2000HGS
◇ルアー スミス  パニッシュ55F・SP  トラウティンウェイビー50S ジェイドMDF・SP・S
DDパニッシュ65SP  バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50  D−コンパクト48  D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  バック&フォース 4・5・7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 3・4・5.5g  ピュア5g日本アワビ  ニアキス 4g・5g カナギジグ 5g
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2号
◇ネット  スミス チェリーネット ヤマメ
◇アクセサリー スミス  シュアーフックスーパートラウト1G クロスロックスナップ♯1



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