冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2016 飛騨川釣行記 (その4) 》


■ 大型の季節

 いよいよこの川で渓流釣りができるのも1か月を切ってしまった。先週増水の後、ようやく今年初めてのアマゴの良型を掛けたのだが、キャッチすることができなかった。悔しかったけれど、今年初めての尺クラスとの出会いに内心ほっとしていた。しかし狙いは40cmクラスの秋鱒。シーズンも残り少なくなったが、なんとか有終の美を飾るような魚に出逢いたいものだ。


■ さらに上流を目指して

 この日も早朝から川に入るが、網漁の影響なのか里川エリアは極めて渋かった。そこで今シーズン初めて上流域に足を延ばすことにした。

 今年は全国的に熊の出没情報が多く、これほどマスコミに煽られると流石に私も神経質になり、上流部に入ることを控えていた。しかしこの時期、遡上系の良型に出逢うためには、どうしても彼らが出没しそうなエリアでの釣りをすることになる。そこでやむを得ず今年は熊スプレーを購入した。

 熊鈴と護身用のナイフで武装し、秋鱒が待っていてくれているであろう上流域に今年始めて足を踏み入れた。

 1年ぶりの上流部は台風の影響もあり水は充分にあった。しかし結果は散々なものだった。増水のタイミングで遡上したであろう大型は、このエリアを通過してしまったか?釣られてしまったのか?全くその気配は感じられなかった。時折姿を見せてくれるのはおチビさんばかりで、夏鱒を思わせる容姿の良型が一瞬ルアーに反応しただけだった。

 熊笹が茂る急勾配の斜面を熊の恐怖と闘いながら降りた苦労は報われることなく、さしたるお土産もないまま退渓することとなった。タイミングが合わない今年の渓流を嘆きながら、林道と化した崩れた旧道を、鈴を鳴らしながらの帰り道は本当に長かった。


■ 夕マズメ

 平日に休みを取って意気揚々と上流部に入った今回の釣行だが、行く先々で秋の渓流釣りの厳しさを思い知らされた。日帰り釣行のため昼食後に仮眠を取り、一息つくと既に午後4時近くになっていた。今シーズン、いい魚と出会うタイミングは夕マズメの時間帯が多く、実は密かに期待していた。待望の時間帯はポイントを大きく下流に移し、再び里川エリアを攻めることにした。

 ポイントは落差のある淵の上流部にあたるエリアで、増水後に下流部から差してくるいい魚に出会えることが多い流れだ。地形の変化に加え、木々や葦などが生い茂り、大型魚が身を寄せるには絶好の場所である。

 ロッドは定番のインターボロンIBXX60MT。盛夏はマジカルトラウト MT-S56ULM/3を使うことが多かったが、秋鱒狙いはパワーのあるインターボロンシリーズが最適だ。大型の走りを止め、深場攻略のヘビーシンキングミノーを打ち込むパワーと、チェリーブラッドMD75や82までの大型ミノーによるリアクションの釣りもこなす操作性を持ち合わせている。

 入川口からしばらく瀬を釣り上がり、最初のポイントとなる淵のディープエリアをジェイドMDSで攻めてみたが全く反応がなかった。次に流れ込み、ボサ、トロ瀬をパニシュ55Fのヒメカラーで攻め上がっていくと、長さは無いがスタイルのいいベッピンアマゴがバイトしてきた。少し暗くなった渓に、薄らと白く浮き上がるパールのヒメのカラーは、この時間帯に多用するお気に入り。いつもいい魚を釣れてきてくれる。周りは薄暗くなり始め、納竿の時期が迫ってきた。そう思いながら、今日最後になる落ち込みのポイントに足をすすめた。



■ 思わぬ浅瀬で

 手前のトロ瀬と対岸の岩盤際には魚はついていなかった。この上は大小様々な石が転がっている落ち込みだ。岩盤の上には木々が流れの上に垂れ下がり、水中の状況も目視で確認できないほどの薄暗い流れになっていた。水深は浅い。あまり流れに近づかないようにしながら、この落ちこみの頭にパニッシュ55Fのヒメカラーをキャストした。岩盤に向かう流れにパニッシュを乗せて送り込み、落ち込みの瀬を流して行く。リトリーブすればリップが石に刺さってしまうほどの浅瀬を、岩や障害物にラインが取られないように注意しながら、ルアーの行方を追っていく。

 ふと周囲に目を逸らした時だった。ラインを引きこむようなあたりがロッドに伝わってきた。「あれ!」ロッドを握る左手は無意識に反応し、あわせを入れていた。ラインの先には何か赤黒い魚が見えたが正体はわからない。「なんだろう。」喰ってくるなら岩盤際だと思っていたため予想外のバイトに驚きながらも、この魚の正体を確かめようと慎重にやりとりを始めた。流れに任せての送り込みでラインはふけていた。そのためあわせも効いているか疑わしい。無理をせずに下流の開きに一旦魚を下らせ、少し落ち着かせてから掛り処を確認しよう。

 魚は素直に下流に下ってくれた。それにしても赤い。この時良型の秋色アマゴだろうと思っていた。大人しくなった魚に確認の意味であわせを入れてしっかりとフックセットし、いよいよランディングに入っていく。前回無念のバラシを経験しているので、今回は特に慎重であった。激しく暴れる様子は無かった。尺を軽く超える魚の引きを楽しみながら、静かに浮き上がるのを待った。動きが無くなったことを確認し、間合いを詰めたのちにチェリーネットヤマメを用意した。魚は最期の抵抗をする。「イワナだ。」この時初めて魚の種類が解った。ただし良型の太いイワナ。何故水中ではあれほど赤く映ったのかよく分からないがいい岩魚だ。水面に浮いたところを一気に掬い上げ、ランディング。「獲った!」

 今年は夕方の相性がいいようで、この時間帯にいい魚に出会える確率が高い。ファイト中あれほど赤く見えた魚だったが、ランディング後のイワナはそれほどでもなかった。「これがアマゴだったら。」良型のイワナを手にして言うのもこの魚に失礼だが、そう心の中でつぶやいた。老眼の釣り師は、薄暗くなった渓でオートフォーカスのピントに悪戦苦闘しながら画像を押えていた。気が付くと日はどっぷりと暮れ、マグライトの灯りを頼りに、周囲の音にビクビクしながら川通しで下っていくことになった。




● マイタックル


◇ロッド スミス インターボロン IBXX−53MTH IBXX−60MT
マジカルトラウト ULフラッシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
シマノ ツインパワーC2000HGS
◇ルアー スミス  パニッシュ55F・SP  トラウティンウェイビー50S ジェイドMDF・SP・S
DDパニッシュ65SP  チェリーブラッド70・75・82MD DEEP70  バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50  D−コンパクト48  D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  バック&フォース 4・5・7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 3・4・5.5g  ピュア5g日本アワビ  ニアキス 4g・5g カナギジグ 5g
◇ライン  ヨツアミ PE G-soul WX8 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2号
◇ネット  スミス チェリーネット ヤマメ



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