photo by T.yuhara
冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2017 飛騨川釣行記 その3 》


【難しいは楽しい?】

 今年は遡上鱒を狙って本流を中心に釣りをしてきたが、本当に水位に悩まされることが多かった。空梅雨に急な豪雨。週末の遠征組には厳しい夏だった。遡上魚を狙う上で水位変化は大切な要素。広大な流れの中から一尾を探し出そうとするのだから、ポイントごとの適水位を理解することは魚との距離を縮めるうえで重要だ。出会いの確率を高めるため、流れに立って地形変化や周囲の環境を確認し、ルアーに伝わる流れの変化を記憶していく地味な作業を続けた。自分のスタイルに合ったポイントで、狙いの魚を掛ける。手にしたときの喜びは忘れられないものになるだろう。この時期沢筋に入れば、癒してくれる渓魚たちが居るのは解っている。しかしまだ私は挑戦者でいたいのだ。
「平鱸、サクラマスの次は本流の大アマゴか?」
「難しい釣りを選んだな!」
と友人たちは呆れている。こればかりは性分なので仕方がない。
「難しいから楽しい。」
 気力と体力が続く限り挑み続けたいと思っている。気が付くと週末が近づいてきた。大型遡上魚を掛ける姿を妄想しながら、タックルに向き合う日々がずっと続いている。


【心が折れかけた8月上旬】

 渇水の7月中旬までは鮎師に混じり早瀬を攻めた。尺上までは掛かるのだが、そこから上が難しい。淵では釣り人を嘲笑うかのように悠然と泳ぐ大型を何度も目にした。しかし彼らを振り向かせることは難しかった。7月も後半を迎えると何度か増水はあったのだが、容易に微笑んでくれる遡上鱒は居なかった。厳しさは解っていたが、あまりの反応の無さに心が折れ、釣り場までの道中が長く感じられるようになったもこの頃だった。


【巨大な岩がころがる荒瀬】

 8月上旬、いよいよ水位は下がり始め、平瀬は流れが止まったようだった。流れを求め、川幅が絞り込まれ巨大な岩と落差のある荒瀬に入ることにした。鮎師が川に立つ前に大岩周りの流れを流すのだ。ルアーはチェリーブラッドMD82Sのアユカラー。彼らが飽食している鮎に合わせて82mmをチョイス。ロッドは強い流れに負けないようにインターボロンXX IBXX-77MDSを選んだが、この日の流れでは少しオーバースペックだったようだ。流れに馴染ませるため少し上流にキャストし、流れの中のディープエリアを意識し誘っていく。日差しが強くなる前に多くのポイントを攻めるため、数投でポイントを見切り釣り下っていった。

 荒瀬をしばらく釣り下ると、大岩の前で合流した二つの流れが、再び二つに分かれて下だっていく水深のあるポイントに来た。上流からドリフトさせながら流してきたチェリーブラッドMD82Sに大岩の前の流れの緩んだ弛みターンをさせ、喰わせの間を与える。ルアーの動きが一瞬止まった瞬間、ボトム附近に潜んでいた何かが突き上げるようにルアーを襲った。「喰った!」流れに戻ろうとするのは25cm越えの良型アマゴ。そいつをサクラマスロッドで一気に足元まで寄せてランディング。銀ピカの夏アマゴを期待したのだが、既に色付き秋の気配が感じられる一尾であった。




 荒瀬を攻め終わると、日差しは随分強くなっていた。ウェーダーではこの暑さに耐えきれず、ウエットスタイルに着替えて釣りを続けたが、一尾を追加するのがやっとだった。




 午後からポイント開拓のために下流部に入り、釣りを続けたが何の反応もなく、少し早めに帰路に就いた。真夏の本流は本当に厳しい!そう感じさせられる釣行だった。


【気分を変えて】

 「狙いはあくまでも大型の遡上魚!」と言ってはみたものの、厳しい釣りばかりではやる気が維持できない。次の週末は少し上流の里川エリアに釣り場を移し、翌朝のために道の駅で寛いでいると、鮎師が話しかけてきた。
「どうだい?」
「だめですね〜。」
こんなやりとりから情報交換が始まった。その中でおとりを襲う大イワナや良型のアマゴが話題となり、
「鬼退治をして欲しい!」
と頼まれた。そこは平坦な釣り場の唯一の深場らしく、これまで竿を出したことのないポイントであった。そこで明朝釣友とともに鬼退治に出かけることとなった。
 目覚めると激しい雨が降っており、川には濁りが入っていた。案内されたポイントは小さな落ち込みに深場が続き、対岸にはテトラが入っていた。遡上魚が身を隠すには好都合のポイントだ。早速釣友がスリムミノーで先行し、私がジェイドMD-Sでフォローを入れていく。期待して入ったポイントであったが、先行する仲間が攻める表層では何の反応もなく、既に彼は瀬の落ち込みまで釣り上っていた。次に私が中層以下をイメージし、濁りが入った流れをジェイドMD-Sのチャートで流し始める。
 穏やかな流れなのでジェイドMD-Sをドリフトさせても充分中層あたりを自然にトレースできた。狙いの棚まで送り込み、あとはロッドティップでリフト&フォールを繰り返し魚にアピールしていく。ロングリップのジェイドMDはレンジコントロールがしやすく使いやすい。タイトなアクションで擦れ難いのがジェイドの利点である。流れを掴みながらトレースラインを変えながら攻めた数投目。ジーとドラグ音とともにアマゴが喰ってきた。
 この日は少し送り込んだ方が良かったようだ。濁りが入ったために魚の鼻先に派手なカラーのチャートタイガーを送り込んだ私に軍配が上った。大きさもまずまずの体高のあるアマゴだった。期待していた鬼は確認できなかったが、この日新たなポイントを加えることができた。








【夕まずめのトロ瀬】

 本流調査をするなかで、いいロケーションの場所に数多く出会った。落差のある流れ込みから淵に続くダイナミックな渓相で、水深のある流れには大岩がゴロゴロある複雑な底質の流れ。6~7月の夏アマゴのころに是非狙ってみたい流れであった。ただ季節は8月中旬。流れの中は徐々に秋に変わり始めてきているのだろう。渓魚たちも産卵を意識し、早い流れの中で活発に餌を追わなくなった今、このポイントを攻めることにどれほど意味があるのだろう。そんなことを考えながらも、余りにいい渓相のため、活性の上がる夕まずめまでの時間をポイントチェックに費やした。
 気持ちいい流れでリフレッシュした後の夕マズメ。瀬の落ち込みから徐々に水深のあるトロ瀬にルアーを流していく。ここではインターボロンXX IBXX-66MTにPE0.8号。チェリーブラッド75MDの赤金をドリフトさせながら反応を見ていった。日も傾きそろそろいい時間だ。流れは下流の鉄橋に向かって一旦ゆるやかな瀬尻となり、下流の鉄橋に向かって流れている。トロ瀬が終わる瀬尻に差し掛かるころ、対岸の石積のあたりでバイトがあった。大型でないことはすぐに判ったが、久しぶりにあたりを取ったので慎重にやりとして取り込んだ。素直に喰ってきた様子からいい時合だったのだろう。この魚も少し色が入り始めた魚。画像を押さえて優しくリリースした。








【仲間の存在】

 真夏の本流釣りは本当に厳しかったが厳しい中にもいい出会いもあった。仲間を通じて知り合った同じ遡上鱒を狙う現地の釣り人と交流することができた。釣りのスタイルは違えども同じ鱒釣り師。すぐに意気投合し、釣りを一緒にすることになった。季節ごとの飛騨川の様子や、水位変化に対応したポイントの選定、流し方、ルアーの使い方等々。これまで手探りでこの川の本流で釣りをしてきたが、今後は情報交換をしながらお互いの釣りが高められればと思っている。またカメラに関しても相当に拘っているようで、今回素晴らしいスナップ写真を画像に収めてくれた。
photo by T.yuhara

 さて肝心の釣果だが、幸運にも増水の下げ水の状態で川に入ることができたので、大いに期待をしたのだが、私はそのチャンスが生かし切れなかった。しかし彼は流石に地元のエキスパート。しっかり結果を出してきた。いつまでたっても私にとっては釣りも写真も修行です。





● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-77MSD IBXX-72MT IBXX-66MTマジカルトラウトMT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラC3000 C2500HGS ツインパワーC2000HGS
◇ライン  ヨツアミG-soul WX-8 PE 0.6〜0.8号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  チェリーブラッドMD82S MD82 MD75 MD70 DEEP70
ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
パニッシュ70 70SP DDパニッシュ65 65SP
バルサハンドメイドミノー 50〜70mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50・63 D−コンパクト48
D−インサイト44・53  D-ダイレクト55
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 5.5g  ピュア5g日本アワビ
◇アクセサリー スミス SP♯0



[ 戻る ]