冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2017 飛騨川釣行記 その6 》


【嵐の前に】

 9月の連休は釣りをお休みしようと考えていた。恐らく連休中は遠征組がこの渓にやってくるだろう。釣り人の数は多くはないだろうが、目的の流れに入るには相当の覚悟が必要だろう。前日から泊まり込んでの釣行は流石に厳しい。そのため連休はもう少し下流域を攻めようと決めていた。しかし週間天気予報を眺めているとこの連休に合わせたかのように台風がやってくるようだ。この天候であれば遠征組の数は減るな。刻々と変わる天気予報を眺めながら釣行スケジュールを立てた。最終的なプランは、連休初日の早朝ランドロックを狙い、午後に里川エリアの本流差しを探る日帰り釣行とした。


【先行者】

 金曜の夜中に車を目的地に走らせ、いつもの場所に着いたのは5時過ぎ。やはり富山県に流れるヤマメ圏の釣り場が禁漁になった影響は大きいようだ。既に車が3台止まっており、人の気配も無いことから川に入っているようだ。やはり少し甘かった。残念ながら2週続けて狙いのポイントには入渓できず、今回は更に車でしばらく走り、上流で竿をだすことにした。


【気難しい遡上鱒】

 今季この流れに入るのは2回目。前回は少し増水した状況で釣りをしたが、開けたポイントがあまり多くなかったことを記憶している。やはりこの時期は流れの穏やかなポイントを攻めたいところだが、ここでは落差のある落ち込みの前後に、秋鱒の好む流れを探すことになるだろう。さっそくいつものインターボロンXX IBXX-60MTにC2500HGSをセットし。PE0.6号にフロロの2号のラインシステムで釣り場を目指した。
 9月の中旬を過ぎ、下り坂の天候で気温は13度を下回った。レインの下にフリースが欲しい程の肌寒さであった。水量は先週に比べ恐らく水位も下がっているようで、今回は河原がそれなりにあった。そのため穏やかな流れも適度にあり、コンディションは思ったほど悪くない。早速緩い流れにルアーを送り込んでいく。
 今日はパニッシュ55F 70F、トラウティンウェイビー50S、水深のあるところはジェイドMDかDDパニシュ65SPをローテーションしていくことになるだろう。早速探っていくと小型のイワナが姿を見せてくれる。やはりイワナの渓だ。改めて実感させられる。落ち込みや開きの水量や水色も申し分なく、遡上鱒が差していることを願いながら上流を目指した。




 しばらく川通しで釣り上がっていくと、落ち込みの先に開けたポイントが見えてきた。落差のため下流からは流れの様子がよく判らなかったが、恐らく開きになっているのだろう。うっかり流れに足を踏み入れ、落ち込みの頭の岩の周辺に潜んでいるかもしれない遡上鱒を深みに追いやってしまうかもしれない。静かに落ち込みに近づき、上流の穏やかな流れをイメージして、ブラインドでパニッシュ55Fを打ち込んだ。数投して魚の反応がなかったため、ゆっくり岩を乗り超え、流れを確認すると予想通り水深50cm程度の開きなっていた。流れの中の地形変化に目をやると、何か黒いものが僅かに動いて見えた。「お!居た!」流れに乗せてドリフトさせていたパニッシュ55Fを、黒い魚の鼻先めがけてトレースし、直前で誘いを入れるが反応がない。それどころかその魚はルアーに驚いたのか?上流の水泡の中にゆっくりと移動してしまった。後を追う様にもう一尾の姿も確認できたのでペアリングしていた魚と思われた。この筋はやめておこう。ペアリングの魚を諦め、周囲の流れに潜む別の遡上魚を探した。左岸の岩盤際の浅瀬を凝視すると、ぴったりと岩に身を寄せる大型の魚を発見した。濃いオリーブ色で岩と同じ色彩の背中のため、そのままじっとしていたら見つけられなかっただろう。時折ヒラを打つため、体側の鈍い銀色とオレンジの差し色が水中にあってもはっきりと確認できた。「遡上鱒だ!」流れの緩い場所で岩と同化しながらパートナーを待っているかのようだった。そこで上流から鼻先にルアーを送り込み、アクションを加えてバイトを誘ったが全く反応しなかった。擦れさせないよう、ルアーのカラーやサイズ、流し方を変えながら様々なアプローチで口を使わせようと試みたが、何の興味を示すことなく、この魚もゆっくり流れの中に消えてしまった。喰い気のない魚にスイッチを入れさせるのは難しいな。秋鱒狙いの難しさを改めて感じさせられた瞬間だった。


【イワナの渓】

 その後同じような流れはあったが大型の魚の姿はなかった。左右から小さな沢が流れ込んでいたが、其々の沢筋も念のため確認したが、反応するのは20cm前後のイワナばかり。やはりここにも大型の魚は居なかった。徐々に深く狭い渓相が続くようになってきた。いよいよ山岳渓流を思わせるような大岩や落ち込みが目立つようになり、遡上鱒狙いというよりも大イワナが潜んでいそうな流れになってきた。この先のV字の流れを進むには、相当の高巻をしなければならない。11時前にここで午前の釣りは終了とした。








【さらに上流を目指し】

 早めの昼食を済ませ、釣りを再開したのは昼過ぎ。WEBでで台風の位置と天気予報を確認し、午後からのプランを考えた。これから雨が降るようだが大崩れはないようだ。せっかくなのでもう少し上流部を探ることにしよう。山深い上流部は曇りでも薄暗い。安全を最優先し上流部は3時頃まで。夕マズメのワンチャンスは里川のエリアに大きく移動しで釣りを再開することにした。
 午前中退渓したポイントからは渓がV字になっていた。国土地理院の地形図で改めて等高線や斜面の形状、道路との離隔を確かめながら、緩やかな斜面を選んで渓に下りて行った。初めての場所はいつもこのように地形図とGoogleEarthの空撮画像で釣り場のイメージをインプットしながら現場に入ることにしている。


【狙い通りの一尾】

 地図どおり緩やかな斜面の先に、岩盤に囲まれた流れが見えてきた。なんとか降りられる場所を見つけ出し、ゆっくりと足場を確かめながら川面まで降りていく。流れが岩盤を削りながら下っていく渓相はまさに山岳渓流そのもので、緑深く薄暗い落差のある流れは、やはりイワナが好みそうな渓相である。それも大型が潜んで居そうな流れだ。足場の高い立ち位置からゆったりとした小渕を攻めるために選んだルアーはDDパニッシュ65SPのニジマスカラー。アピール力の高い大き目のルアーで、足元まで中層をしっかり引きたかった。DDパニッシュ65SPを鏡のように開けた流れに向けて送り込み、落ち込み手前の岩の前で水を掴ませ誘っていく。流れの真ん中に鎮座する大きな岩をかすめるように上流に引いてくる。ゆっくりと泳ぎ始めたDDパニッシュの背後に大型の黒い影が追尾してきた。勢いよく近づくとそのまま襲い掛ってきた。まさに1投目。狙い通りの一尾だった。足場の高い釣り座でバイトまでの一部始終を見届け、少し興奮しながらファイトに入った。魚は一気にルアーを咥えると、反転して元の流れに逃げ込もうとする。距離があったので魚種は確認できなかったが、恐らくイワナだろう。下流から追わせて喰わせたためにリアフックを喰っているかも知れない。掛り処が心配なので慎重に寄せるが、足元は落ち込みの白泡で水面が荒れてランディングし辛い。滑りやすい岩盤を慎重に下りながら、ランディングしようと腰のネットに手をやるとなんとネットが外せなかった。背負っていたカメラのストラップにネットが絡んでいたのだ。「なんてこった。」ガサガサと腰の周りに手をやっても外れる気配はなく、覚悟を決め岩盤の切れ目に上げることにした。幸い魚はしっかり腹のフックを咥えていたので一気にずり上げることができた。
 真っ黒い魚の正体はやはりイワナだった。体長は40cm。少し色の入った上流部の魚らしく少し痩せた個体。本流域の鮎を飽食したコンディションのいい魚ではないが、厳しい山奥の流れを生き抜いた生命力を感じさせる個体であった。
 ここから大変だった。画像を残そうとしたのだが、薄暗いV字の渓底で撮影場所の確保が本当に厳しかった。少しでも明るい岩場を求め、一旦魚をライブバックに収めて岩盤を下り、岩場の片隅に限られたスペースを確保し、ネットの上にイワナを配置して画像を撮った。小雨降る中、薄暗い渓底での撮影は、シャッタースピードだけでなく、ピントを合わせることも困難を極めた。結局満足のいく画像が残せないまま、撮影も早めに切り上げこの釣り場を後にした。




 落差のある落ち込みを攻めたあと、上流を目指し釣り上がったものの、川幅を含め遡上鱒を狙うにはますます険しくなくなってきため、魚止めの堰堤まで釣り上がって上流部の釣りは終了とした。その後場所を里川エリアに移したが、こちらもいい反応が得られず、台風の動向も気になったために早めに帰宅することにした。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-60MT IBXX-66MT
◇リール シマノ ステラ C2500HGS  C3000
◇ライン  DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
よつあみ G-Soul WX-8 0.6〜0.8号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  DDパニッシュ65 パニッシュ55F 55SP 70F 70SP トラウティンウェイビー50S 65S
トラウティンサージャー6cm AKM48メッキカマス チェリーブラッドDEEP70 MD75 MD70
ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル ボトムノックスイマーUSWカラー トラウティンサージャー6cm
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50・63 D−コンパクト48 D−インサイト44・53  D-ダイレクト55
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g ドロップダイヤ 5.5g  ピュア5g日本アワビ
◇スナップ スミス SP♯0



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