冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 飛騨川釣行記 その2 》


【濁り】

 盆明けから秋鱒に狙いを定めた渓流シーズンを本格的に始動させたが、その後も天候不良による思わぬ増水が週末のたびに発生し、釣行を断念する日々が続いた。そしていよいよ禁漁前の1か月を迎えた週末、ランドロック狙いで釣りに出かけることができた。道中未明にかけて大雨に振られながら夜明け前に現地に入った。
 薄暗い流れを橋上から覗き込むと、水面が少し白く見えた。「濁りだ!」恐らく未明の豪雨だろう。早速WEBで確認すると、深夜2時ごろ1時間に13mmも降ってしまったようだ。これでは釣りにならない。夜明けを待たずに大きくポイント移動を決断し、ダムによって流れが遮断された里川エリアで早朝を迎えることにした。水量はびっくりするほどではないため、濁りさえ取れれば明日は何とかなるだろう。


【里川エリア A支流】

 恐らくいつもの里川は釣りができたはずだ。しかし淵をメインに攻めたかったので1日攻めるほどのポイントは無い。折角なので今回はいつもと違う支流をチェックすることにした。ダムのバックウォーターとなるこの里川エリアは、開けたポイントが多く、夏の日差しの強い時期は足が遠のいていた。幸い今日はローライト。増水でダム差しの遡上魚が期待できるため、入ってみることにした。
 川は朝霧が立ち込め肌寒かった。濁りとともに水量も多く、瀬は白波が立つほど勢いがあった。大型が足を止めそうな淵は少ない支流のため、落ち込みを拾うしかない。少し歩いたがこの水量では深みにルアーを通すことが出来ないだろう。しかたなくバックウォーターまで下って周辺の淵を少し叩いたが、反応が無かったために早めに見切り、いつもの里川に車を進めた。


【いつもの里川】

 本流域から鮎を飽食して差してくる秋鱒狙いの拠点は、この里川エリアである。入渓点やポイント、攻め処はこれまでの釣行で押さえている。しかし今年は増水が多く、流れが変化している可能性があるためアップデートの必要性があった。先ずは情報収集をしながら、夏から秋にかけて魚が好みそうなポイントを中心にチェックをしていった。
 この時期私は、淵と緩い流れを中心にリアクションの釣りを心掛けている。水位と天候から何処を、どの時間帯に攻めるか?その日のプランを立てて釣りを進めていく。
 午前の移動中、夕方の本命ポイントの淵には川を覗き込む釣り人らしき姿があった。叩かれてしまいうのか?少し不安がよぎったが、与えられた環境の中で釣りをするしかないと焦る気持ちを落ち着かせ、淡々と午前中のプランを実行していった。


【小堰堤のバックウォーター】

 いつもの里川エリアで最初に訪れたポイントは、淵と瀬が重なり木々によって光が遮られた静かなポイント。秋鱒はこの時期、水深のある淵の底や、流れの穏やかな浅瀬の岩盤際、オーバーハングしたブッシュや木々の下に身を寄せていることも多いように感じている。
 禁漁間近の9月末には、瀬落ちの上流側のブラインドになったカケアガリに身を置き、下流から差してくるパートナーを待っているような行動を取る魚に出会うこともあった。浅瀬だからといって不用意に遡ると、痛い目に合うことも多かった。そのためこの時期はいつも以上に川原には静かにアプローチし、夏場とは異なる流れに目を向ける必要があると考えている。
静かにポイントに入り、小堰堤により出来上がった淵の流れ込みから釣りをスタートした。

 ロッドは前回の釣行でいつものインターボロンXX IBXX-60MTはメンテナンスに出している。そのため今日はIBXX-53MTHを持ち込んだ。今日はDEEPのリアクションの釣りをするので少し張りのあるロッドが必要だった。ドリフトの釣りで尺までの魚をパニッシュ55Fなどのミノーで狙うのであれば、しなかなマジカルトラウトULフラッシュ MT-S56ULM/3という選択肢もあるのだが。
 先ずは流れ込みの浅瀬をウェイビー50Sで流し、オーバーハングした木の下や、流れの当たる岩盤の周りに送り込んでいく。反応はない。
 次にジェイドMDSPやDDパニッシュ65SPを潜航させ、水深のある淵の中層を探っていく。時折激しくロッドを煽り、トリッキーな動きでリアクションを誘っていく。流芯や岩盤際などを、トレースラインを変えながら一通り攻め切り、追いがないのでより深いレンジをチェリーブラッドDEEP70で探っていった。


【チェリーブラッドDEEP70】

 岩盤際にキャストしたチェリーブラッドDEEP70を急潜航させ沈めていく。ロッドティップを下げたまま、激しくトゥイッチングを加えルアーを躍らせる。途中ストップ&ゴーで喰わせの間を与えながら反応をみていくと、背中が灰色の大きな魚がチェリーブラッドを追ってきた。最初はルアーの後ろについて追尾をするだけだったが、2度目はすぐ後ろで威嚇するように、左右に体をスライドさせながら追ってくるではないか。「喰え!」「喰え!」こう叫びながら、何とか口を使わそうと瞬間的に動きを止め、直後に誘いを入れて喰わせにかかるが、魚はバイトしてくれなかった。「ダメか〜!くそー!」何かが足りなかったようだ。
 その後D−コンタクト63、ドロップダイヤ5.5gなどでボトム附近を丹念に探ったが、これらのルアーにも反応が無いため、ここでいよいよボトムノックスイマー35を投入することにした。


【ボトムノックスイマー】

 このルアーは本当にユニークなルアーだ。沈下スピードが速く、飛距離も出る。対岸の岩盤際や落ち込みの水泡の下にルアーを送り込みたい場面で、去年から使い始めたルアーである。リリース以来、品薄で入手困難であったため、その秋にやっと手にしたのだが、前評判通りの素晴らしい釣果を私にもたらしてくれた。(2017 飛騨川釣行記 その5 参照)
 そして今季、ボリュームアップした35mmがリリースされた。このルアーを早々と入手し、今回持ち込んでいたのだ。早速岩盤際に垂直に落としボトムを取り、リフト&フォールで誘っていった。そしてキャストを始めて数投目、ボトムを取って2度目のリフト&フォールをしたときだった。一旦底まで沈め、再びロッドを煽りリフトアップし始めた時だった。ひったくるようなバイトとともに、ロッドが引き込まれた。緩めにしていたドラグによりラインが引き出され、余りの引きの強さに大型の魚のバイトを予感させた。


【灰色の背中】

 何度か激しい絞り込みを耐えながら、魚を確認すると、なんと先ほどの灰色の魚だった。水中で暴れる魚の側面には、赤色の模様がはっきりと確認できた。「秋鱒だ!」
 ここからは更に慎重にやり取りを始めた。フックはテールのトリプル1本が標準なので、掛かり処が心配だった。上手く蝶番に入っていればいいのだが。何度か寄せては出されを繰り返しながら掛かり処を確認すると、鼻先にチョンとフックが掛かっているだけだった。これでは無理はできない。魚を水面でローリングさせないよう、ロッドティップを下げながらゆっくりと魚が疲れるのを待った。この間、ネットの準備をしながら魚が静かに浮くのを辛抱強く待ち、静かに水面に横たわった瞬間に一気にランディングに持ち込んだ。
 「獲った!」ランディングネットに収まった秋鱒は、全体に色の入った個体で、赤色のマダラ模様が薄っすらと側面に浮かびあがり、精悍な顔つきの魚であった。びっくりするほどの体高ではなかったが、長さは37cmあった。

 チェリーブラッドDEEP70で中層からボトム附近を広範囲に探り、魚の活性を上げたのちに、横方向にダートする激しい動きには口を使うことの無かった魚を、ボトムノックスイマー35の縦方向でタイトな動きで喰わせる。去年までのDEEPの釣りに、ボトムノックスイマーがフォローで加わることで、秋鱒攻略の引き出しがまた一つ増えた瞬間でもあった。








【これから】

 今年もなんとか本流からの遡上鱒を手にすることができた。本格的な秋はこれからで、さらに下流から同様の魚たちが上流を目指して遡上してくるだろう。また今回入渓できなかったランドロックもこれから少しずつ流れに姿を見せてくれるだろう。禁漁に向けてその時々の状況により、上流部、里川、そして今季まったくいいところのなかった本流域と攻めたいところは山ほどある。残り1月を切り、体が幾つあっても足りないのだが、残る2つのエリアである上流と本流部の秋鱒との出会いを求め、無理のない範囲で釣りを楽しみたいと考えている。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MT
マジカルトラウトULフラッシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ステラ C2500HGS  C3000  ツインパワーC2000HGS
◇ライン  よつあみ G-Soul WX-8 0.6〜0.8号
DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70F 70SP  DDパニッシュ65 
トラウティンウェイビー50S 65S  チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70
ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル  ボトムノックスイマーU ライト 35 
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50・63 D−コンパクト48 D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  F−セレクト 51 64
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
ドロップダイヤ 5.5g  ピュア5g日本アワビ
◇スナップ スミス SP♯0






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