冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 飛騨川釣行記 (その3) 》


【現地で合流】

 この日の午後は釣友をガイドしながらの釣行。地元でいっしょに釣りを楽しむ彼は、シーズンほぼ同じような魚を今は追っている。数年前に庄川で一緒に渓流釣りをして以来、彼はこの釣りの魅力に再び魅せられたようだ。ハンドメイドのランディングネットを1年かけてオイルフィシュで仕上げるなど、渓流タックルに対する思い入れも強く、森に癒されながらマイペースで渓魚と出会いを楽しんでいるようだ。
 午前中ローライトの雨の中、里川の淵で良型の秋色アマゴを出すことができたので、次は彼にも釣って欲しいと思いガイドを買ってでた。さあどんなガイドになるだろうか?  


【雨上がりの渓】

 夕まずめに攻めたい本命エリアがあった。それまでしばらく時間があったので、もう一つの実績ポイントに彼を案内することにした。橋の上下で瀬と淵に分かれる比較的アクセスのいい釣り場で、数年前の増水後に良型の秋鱒を獲ったポイントだった。このエリアの概要説明をすると、彼は下流のポイントを希望した。まずはそれぞれに分かれて釣りを始め、私は上流側の淵とその上のプールを目指した。
 私はインターボロンXX IBXX-53MTH。彼はトラウティンスピン SALUCO TSS-53。長さは一緒だが、アクションに少し違いがあるモデルをそれぞれ選んでいた。集合時間を決め、それぞれ上下に分かれて夕マズメに向けてウォーミングアップを開始した。


【淵】

 時折雨が振りだす生憎の天候であったが、晴天よりはましだった。早瀬を軽く流し、上流側のベストポイントとなる岩盤と淵のポイントに向かった。水色はダムに遮られている区間なので、笹濁りから悪化することは無かった。水量はこの時期の平水よりは高めでいい感じ。
 この淵は水深があるため、DDパニッシュ65SPで中層を広範囲に探ったが、反応がない。次にジェイドMDのSPで対岸の大岩の前後や手前の岩盤際をタイトに攻めていく。秋鱒がいつ飛び出してくるかワクワクしながらジェイドMDを引いたが、これにも反応が無い。そこでチェリーブラッドDEEP70やボトムノックスイマー35を投入し、「動」と「静」のアプローチで深場にフォローを入れたが、これにも魚の気配は感じられなかった。もしかするとアクセスの良さ故に、午前中叩かれていたのかもしれない。


【薄暗いプール】

 次に葦の茂る河原をしばらく薮漕ぎしながら上流に進み、開きのポイントに向かった。ここは木々に囲まれた静かな流れ。右岸に砂利の河原を配した水深1.5mまでのプールになっていた。手前の大岩にゆったりとした流れが当たり、魚はいつもこの大岩の前に当たる流れの淀みと、この岩の右側にタイトについていることが多い。川底がフラットなために水面が鏡のように穏やかなため、あまり近づきすぎると魚が人の気配を感じて身を隠してしまう。ロングキャストで魚からの距離を維持しながら、中層をゆっくり引いて喰わせたい。何を使おうかボックスを眺めると、あるルアーに目が止まった。


【F-セレクト64】

 F-セレクト64。今季リリースされたモデルで、短いリップと特徴的な形状の背中で、ゆっくり引いてもしっかり泳ぐミノーのようだ。実戦投入は初めてだが、.僅かな入力に対してさほど移動距離を必要とせず、ヒラリとアクションしてくれる感度のいいミノーだと感じた。大型遡上鱒を狙う私には64mmの設定は非常に有り難い。早速大岩の上流側にキャストし、流れに乗せて静かに引いてみた。流れに同調させたアップでも僅かな引き心地とともにキビキビ動いてくれる。ルアーの動きをチェックしながら大岩の横をタイトに引いていくと、すぐに小気味よい当たりともに、小振りながら体高のあるアマゴが喰ってきてくれた。

 上流に釣り上がると、活性の高い魚たちが水深の浅い流れ出しに着いていて、面白いようにFセレクト64にアタックしてくる。小型のものも多かったため、喰い切れずにバレルこともあったが、流れにルアーが合っていた。ここにきて渓全体が夕マズメを向けて活性が上がり始めたように感じられたので、早めに切り上げ移動することにした。
 合流して話を聞くと、彼の入った下流部は入渓点に近く足場のいい釣り場が災いし、先行者が攻めた後だったようだ。少し川を遡れば竿抜けになっていたので、足で稼ぐことの必要を改めて感じた。竿抜けポイントは活性が上がり始めていることを伝え、夕マズメの釣りに備え、彼に頭を切り替えてもらいながら急いで次のポイントに向かった。


【今日の本命ポイント】

 最後に選んだポイントは、大岩と淵に流れ込みが連なるダイナミックな渓。川幅はそれほどでもないが水深があり、大きな魚が足を止めるポイントだ。ここは夕マズメに実績が高く、魚たちの活性も高まり始めたためにこれから期待が持てる。ここではガイドに徹し、彼に先に攻めてもらい、私が念のためのフォローを入れて釣上がることにした。
 まずは淵をダウンで攻めていく。狭くなった落ち込みの上流で対岸に渡り、チェリーブラッドDEEP70のヤマメカラーで釣友が釣り始めた。攻め処と流し方は一通の説明は済ませていた。しかし淵の釣りは苦手な上に、DEEPのハイパートゥイッチングで攻めていく釣り方に少し疑心暗鬼になっていた。裏で見ていて何か操作がギコチない。
 それでも言われた通り、足元から順に対岸、中央の沈み岩も確実にリトリーブで攻めてはいるものの、魚からの反応は無かった。

「居ないのか?」
後ろからその様子を眺めていると、
「一度やって見せて。」
と彼からデモのリクエストが入る。
そこで彼と同じ立ち岩の上に立ち、同じくチェリーブラッドDEEP70のパールアユでデモ釣行を開始した。


【釣友の前で】

 後ろで見ている彼に、改めて流し方を説明しながら釣り始めた直後だった。沖の沈み岩の前にチェリーブラッドを沈め、反転させてから激しくトゥイッチングでルアーを躍らせ、張り出した岩盤をかすめながら足元まで引いてくると、ピックアップ寸前に突然魚が喰ってきた。
「喰った!」

 デモ中のいきなりのバイトに少し驚かされたが、良型にアマゴが喰ってきた。釣友の前で掛けるところを見せられたことが嬉しく、ゲストより先に釣ってしまったことも、この時は気にも留めることはなかった。本当は現場で実際に釣ってもらうのが一番なのだが、彼と私の釣りの違いも含め、淵のポイント攻略のヒントを今回彼は掴んでくれたはずだ。
 喰ってきたのは朱点が鮮やかな秋色アマゴ。サイズは27cm程だが本当に美しいアマゴだった。見惚れながら画像に収め、直ぐにリリースすると元気に流れに消えていった。





【またまた】

 綺麗な秋色のアマゴに魅了された私たちは、高まる期待に胸を膨らませながら次のポイントを攻め始めた。ここはゆったりとした水深のあるプール。対岸の垂れ下がった木の下と岩盤際に潜んで居る魚を狙っていく。極力岸際ギリギリにキャストし、急潜行させてルアーを追わせ、ストップ&ゴーのハイパートゥイッチングでリアクションバイトに持ち込む。手前の岸際から順にキャストしながら、徐々にトレースラインに変化を加え、攻め上がっていくが彼のルアーにはまたも魚の追いは見られなかった。
 そこで開きの深場は早めに切り上げ、岩盤の壁をへつりながらよじ登り、大岩と岩盤の地形変化のある上流部を攻めるように彼に促したつもりだった。すると
「先にやって見せてくれ!」
とリクエストが返ってきた。足場が悪く釣り難いために、此処では釣りをしたくないと判断し、まずは下流の開きの深場に再びチェリーブラッドDEEP70のパールアユをキャストし、ダウンクロスで探っていく。しばらく攻めたがやはり魚からの反応が見られないために、彼に交代することなく引き続き上流側にキャストを始めた。

 西の空は少し色づき始め、V字の渓は薄暗くなっていた。ここでも釣りをしながらキャストポイントや喰わせ処のレクチャーを始めた数投目のことだった。またも私のルアーを良型のアマゴが喰ってきた。
「え!」「また喰った!」
この時“はっと”思った。私が釣ってはいけなかった。彼に釣らせなければ。そう思ったがあとの祭り。
「え〜!」 と声を上げる彼の目の前で、暴れる魚を落ち着かせ、ゆっくり引き寄せネットに取り込む。足元には先ほど魚よりも明らかに大型の秋色アマゴ。この魚も朱点が鮮やかで尺はある。恐らく嬉しさと気まずさで少し顔が引きつっていただろう。素直に喜べない私がそこにいた。 彼は言葉少なく 「先にいくね。」 と言って上流に向かって歩いていった。私は掛ける言葉が見つからず、 「気を付けて!」 と声を掛けるのが精一杯だった。上流に向かって釣り上がっていく彼の背中は少し淋しげだった。


【上流の落ち込みトロ瀬で】

 周囲はますます暗くなり、シャッタースピードが稼げないためにカメラの感度(ISO)と絞りを空けないと画像に残すことが難しくなっていた。そんな中私は手早く画像に残し、ラインを切ってチェリーブラッドをボックスに収め、彼の後を追った。 彼は既に20mほど釣り上がっていたが、この間に魚からの反応は無かったという。対岸に退渓点を見つけたようで、渡渉ポイントを探していた。 「ここから上がろうか?」 と少し疲れた様子で私に提案してきた。私は何とか彼に釣らせたくて 「もう少し上流部にいい落ち込みがある。そこまで行こう。」 と逆に続行を勧め、今日最後のポイントとなる落ち込みに二人で向っていった。


【落ち込みと岩盤】

 落差のある落ち込みをよじ登り、ブッシュのある足場の悪い河原を薮漕ぎしながら、小さな河原が左岸に広がる落ち込みにやってきた。魚の着き場を簡単に説明し、ここでは彼に自由に攻めてもらった。彼は少しファットな50mmのシンキングミノーを取りだし、手前の岩盤前のヒラキから攻め始めたが反応はない。次に2つの落ち込みにキャストを開始した。するとロングキャストした彼のシンキングミノーに大型の魚が追ってきたようだ。小さなバイトがあったようだが残念ながらバレてしまった。
 そのショートバイト以降、魚からの反応は無かったが、その魚の大きさに相当興奮したようで、先ほどの淵での出来事はもう既に忘れていた。結局この日は釣果には恵まれなかったものの、大型の魚の追いと、何より次回釣りをする上での何かヒントを掴んだように思えた。薄暗くなった流れのなかで、
「でかかったよ〜。」
と笑顔でその様子を私に伝えようとする釣友の笑顔に私も嬉しくなった。この出来事の後、二人は気持ち良く夕まずめのこの釣り場を離れることにした。


【その夜】

 この日は、近くの道の駅に移動し、反省会。名古屋からもう一人合流してきたので、今日の釣りを反省しながら楽しい時を過ごした。この時は笑い話となっていたが、実は尺上のアマゴを掛けたとき、彼はこう思っていたようだった。大岩のよじ登ってからの私に釣り場を譲ったのは、足場の問題ではなく、先に彼が攻めた
「ヒラキをダウンにフォローを入れてくれ。」
と言ったつもりだったようだ。そのため
「まさか私が手つかずの上流側を攻めるとは思っていなかった。」
と言っていた。
それぞれの想いを言葉に乗せて相手に伝えるコミュニケーションの難しさを改めて感じた。そして最後の落ち込みで
「大型の魚の追いが無かったとしたら?」
この日の夜は少し気まずいものになっていたのだろうなと恐ろしくなってきた。なにはさておき結果オーライのこの日の釣りだった。
 最後に彼の名誉のために付け加えるが、彼のリールはD社の2000版のハイギヤ仕様だが、私のものより巻き取りスピードが遅く、ラインは伸びのあるナイロンであった。ロッドは私の張りのあるファーストテーパーのH仕様に対し、彼のSALUCOは汎用性の高いしなやかなタイプ。DEEP70をハイパートゥイッチングで動かすには、少し厳しかったのかもしれない。
 安全な釣行。技術向上。そしてなにより釣りを長く楽しむためにも、いい釣友にめぐりあい、スミスのタックルでいい釣りをお楽しみください。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MT
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
◇ライン DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70F 70SP
DDパニッシュ65 トラウティンウェイビー50S 65S
チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70 ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
ボトムノックスイマーU ライト 35
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50 63 D−コンパクト48 D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  F−セレクト 51 64
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g ドロップダイヤ 5.5g
ピュア5g日本アワビ
◇スナップ スミス SP♯0


● 釣友のタックル

◇ロッド スミス トラウティンスピン SALUCO TSS-53
◇リール ダイワ セルテート 2004CH
◇ライン ナイロン 3lb直結
◇ルアー スミス  チェリーブラッドDEEP70 ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル  ルナ



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