冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 飛騨川釣行記 (その5) 》


【またも断念】

 今回は釣友が1年ぶりに川に行きたいとのリクエストを受けての日帰り釣行。愛知県を抜けて岐阜県に入り、今回は木曽福島経由で目的地に向かう。途中豪雨に見舞われ、増水による濁りが懸念されたが、降雨情報を見る限り影響は少ないであろうと予定通り上流部の渓へ車を走らせた。
 現地に到着したのは薄暗い5時過ぎ。小雨の中支流の様子を確認すると、増水していたが濁りはそれほどでもなかった。不慣れな釣友を伴っての釣行なので無理はできない。先ずは本流筋の状況を確認したうえで判断しようと、支度を整えて川に降りて行った。
 朝霞で覆われた早朝の本流筋は増水し、白波とともに勢いよく下流に流れていた。濁りはそれほどでもないが、この水量では渡渉は困難だ。安全を最優先して即座に移動を決意し、今回もポイントを里川エリアに移した。本当にコンディションに恵まれない今年の飛騨川である。


【増水を避けて】

 里川エリアは大丈夫だろうと山を下ると、度重なる台風による雨の影響なのか、ダムの放水で川はいつもとは違う表情を見せていた。普段葦原となっている岸際にも流れが通り、秋鱒が好みそうな静かな流れは殆ど見られない。ここも渡渉は難しいため、川通しで釣り上がることもできない。そのため今回プールや淵を探すランガンの釣りを強いられた。


【マジカルトラウトUL フラッシュ】

 先ずは堰堤下で足を止めている魚を狙って、D−コンやDD−パニッシュ65SPで水面に僅かにみられる深場や巻き返しを攻めるよう、友人にアドバイスした。久しぶりに見る彼の釣りは思ったよりも安心して見ていられた。それもそのはずだった。彼のロッドはマジカルトラウトULフラシュ MT-S56ULM/3。しなやかで扱いやすいこのロッドは、キャストし易いようで、次々と狙いのポイントの周辺にルアーを打ち込んでいた。少し柔らかめのアクションながら、DDパニッシュ65であれば充分対応でき、大型のトラウトとのやりとりも無理ではない。


【DD−パニッシュ65SP】

 下流に続くいつもの開きは、今日は深瀬になっていた。魚が着くとすれば対岸の岩盤の巻き返しか、手前のかけあがりの木々に覆われた還流帯。水深は2m以上ありそうなので、ここでもDD−パニッシュ65SPやウェイビー65S、Dコンタクトなどの中層以下を攻めるためのルアーを選んでいった。
釣友には水面が穏やかになった緩い流れを丁寧に引くよう伝え、私は瀬落ちの直前の開きの様子を見に行った。本当はこの流れを切って渡渉し、下流の淵に潜んでいるだろう大形を狙いたいところだが、今日は残念ながら今日は叶わない。仕方なく開きの中の僅かなヨレを意識し、DD−パニッシュ65SPのヒメマスカラーで攻めていく。
 水深は1m少々。対岸の岩盤の前は浅く、流れの中央に馬の瀬が出来ている。波紋とこれまでの記憶を頼りに、少し強めの濁りの入った開きをアップクロスで攻めながら、少し強めのトゥイッチングで魚からの反応を見ていった。


【スレンダーな尺イワナ】

 トレースラインを意識しながら川に立ちこんでいくと、水温が思いのほか低く今日は冷たく感じられた。ここ数日の過ごしやすかったために水温が低めに推移したのだろうか?ここにも秋の足音が感じられた。
 流し始めて数投目。水深1m附近でコツコツ何かに当たるような感触が伝わってきた。馬の瀬の沈み石なのか?と思っていると「コン」と小気味よい当たりとともに何かがアタックしてきた。魚は流れに乗って下流に走ったために緩めのドラグが音を立てて滑り始める。少しスプールを押さえながらバッドで走りを止め、瀬落ちを避けるよう手前の緩い流れに魚を誘導していく。水面に薄いグレーの細長い魚体が浮き上がった。「イワナか?」幅は無かったが、長さは充分尺を超えていた。連日の雨の濁りの影響なのか?白濁の川によく見られる体色が薄いイワナで、厳しい今年の夏を耐え抜いたためか、スレンダーな魚体からは秋の気配が感じられなかった。
 釣り上げた魚を友人に見せると、今日初めて見る渓魚にスイッチが入ったようだ。すぐに私が攻めていたポイントでキャストを始めたのだが、その後彼の竿が曲がることはなかった。





【堰堤下】

 午後から合流した仲間と遅い昼食を楽しみながら、夕マズメをどう攻めるかみんなで考えていた。その結果淵の実績ポイントは後から到着した彼に譲り、私たちは比較的足場のいい小堰堤下の落ち込みを攻めることにした。いつもなら渇水で攻め処の少ないこのポイントも、今日は増水でいい釣り場になっていた。下流から差してきた大型の秋鱒が足を止めてはいないかと期待を抱きながら入っていく。堰堤下の落ち込みは釣友が攻め、私は上流の堰堤の上流側に入って行った。ほどなくして釣友が驚いた声を上げながら私に手を振っている。何事かと彼にもとに向うと、興奮した様子で
「背中が緑色をした大型の鱒がルアーを追ってきた!」
「え!緑色?」と聞き返すと、
「緑色の背中で大きかった!」
 この時期背中が緑色って何だろう?と考えたが私には思いつかなかった。ただこの増水の厳しい状況の中で、やっと彼にも魚からの反応があったことが、自分のことのように嬉しかった。これまでも濁りでルアーを追う魚が確認できなかっただけだろうが、今日初めての反応に嬉しそうにしている彼の表情は喜びに溢れていた。
 後は喰わせるだけだな。しかし気難しい秋鱒は、この日の厳しい状況の下では彼に微笑んではくれなかった。ガイドとしてはまだまだだなと責任を感じながら、いよいよこの釣行の最後のポイントに移動した。


【大岩周り】

 この日の最後は大岩が川の中央に鎮座しながら流れを二つに分けている大場所。対岸の岩盤に当たった流れは早瀬となって下流に落ち、もう一つは大岩の脇の淵をかすめながら、砂利の馬の瀬と岸際のかけあがりの間を縫って、瀬落ちの早瀬に繋がっている。この時期は、鮎の網漁のポイントになるため普段網が仕掛けられているのだが、度重なる台風の影響による増水で今日は網が見当たらない。これは遡上鱒を狙う私たちにとってはありがたい。ただ誰もが攻める解りやすいポイント故に擦れていることが多く、これまでいい思いをしたことは無かった。
 先ずはチェリーブラッドDEEP70で竿を立てながら対岸の岩盤際の表層附近などを流し、次にロッドティップを下げて中層を幅広く探っていく。最後は中層に沈めた後にハイパートゥイッチングでリアクションを誘ったがこれにも反応がない。それでは上下の動きでフォローを入れようとボトムノックスイマー35を投入したのだが、今日はこれにも反応を示してくれなかった。





【チェリーブラッドMD82】

 今季結果の出ていたアプローチで探ったものの反応がないためここで納竿を考えたが、ふと去年本流域で使い始めたチェリーブラッドMD82のことを思い出した。それは濁りが入る夕マズメの出来事だった。今回同様DEEP70で攻め切った後に投入した、MD82のトゥイッチングに激しくアタックしてきた大型のアマゴのことだった。ローライトで薄暗い状況の淵と状況は酷似している。そこでMD82のヤマメカラーを結び、大型ルアーへの反応を見ていった。
 数投目だった。対岸に向ってフルキャストし、岩盤ギリギリに落として流れに馴染ませてから、激しくトゥイッチングでルアーを躍らせていった。流れの芯を横切らせ、馬の瀬を舐めるようにトレースし、瀬落ちの手前まで流すと何か魚が喰ってきた。瀬を下って行こうとする魚をバッドで堪え、流れを切って手前の還流帯に引き込み、葦を避けながら足元に引き寄せていく。何度か葦に潜られそうになったが何とか寄せると、秋色のいいイワナが姿を見せてくれた。尺には届かないまでも、体高のあるこの時期らしいいい魚。上からこの様子を眺めていた友人も、魚の姿を確かめようとこちらにやってきた。
「イワナだよ。チェリーのMD82で」
と伝えると、喰わせたルアーの大きさに驚いていた。濁りと激しいアクションが今日の川の状況に合っていたのだろう。掛けた状況を説明しながら画像に収め、その後二人で今日の釣りを振り返った。5時を過ぎ山間の里川は薄暗くなっていた。二人の釣り人は、濁りの入った増水する川で心地良い疲労感に包まれながら、楽しかった釣りの終りの余韻をしばらく味わった。





【これから】

 いよいよ2018年のトラウトシーズンのカウントダウンが始まった。まさに雨に悩まされたシーズンであった。今回も濁りと増水で目指す秋色アマゴの姿すら確認することはできなかった。しかし久しぶりの友人との釣行は、釣りに限らず、仕事のこと、家族のこと、健康のことなどを、様々なことを話すいい機会となった。これも仲間との遠征釣行の楽しみの一つであり、この旅により学ぶところも多いことに改めて気づかされた。釣りそのものは、様々な制約によりストレスが無い訳ではないが、お互い遠慮なく物が言える間柄故に後に引くことは無い。釣果を目指す釣りもあれば、こんなのんびりとした釣りもいいだろう。
 いよいよ今季も残り2周間となった。ますます秋は深まり、秋鱒との出会いの確率はますます高まってくるだろう。記憶に残る一尾との出会いを求め、シーズン終了まで渓を歩きたいと思っている。次こそは天気に恵まれますように。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MT
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
◇ライン DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70F 70SP
DDパニッシュ65 トラウティンウェイビー50S 65S
チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70 ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
ボトムノックスイマーU ライト 35
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50 63
D−コンパクト48 D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  F−セレクト 51 64
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
◇スナップ スミス SP♯0


● 友人のタックル

◇ロッド スミス マジカルトラウトULフラシュ MT-S56ULM/3
◇リール シマノ ツインパワー MAG C3000HGS
◇ライン PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70 70SP 55F 55SP DDパニッシュ65
 トラウティンウェイビー50S 65S  チェリーブラッドDEEP70



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