冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2018 飛騨川釣行記 (その6) 》


【もはやお約束】

 今季のランドロック遡上鱒調査はこれまでことごとく増水に阻まれ、今回の釣行も直前の雨で朝から白波の立つ厳しい状況。ポイントに最初に到着したのだが、後からやってきた釣り人に挟まれ入渓エリアは絞られていった。廃道を下りながら眺める谷底の流れは、先週同様に激しい白波が立つ荒瀬ばかり。20分程下っても好転する気配は見られない。今回も遡上鱒には厳しいと判断し、早々に引き返すことにした。自然が相手なので仕方ないが、もはやお約束になってしまったこの状況に笑うしかなかった。本当に厳しい今季のランドロック釣行である。


【大きく下流に移動して】

 上流がこの様子なので、下流の状況は容易に察しがついていた。これまで溜め込んだ濁り水をダムが放水するため、濃い笹濁りとなった川でのミノーイングを強いられることになる。そこで今回は水深の浅い流れを求め里川エリアの少し下流に入った。
 ここは渇水期には厳しいが、今日は支流から澄んだ流れも加わり、いいトロ瀬が続いていた。ここで適度な水深がある岸際や大岩の裏側などに潜む秋鱒の姿を追っていった。


【様変わりした流れ】

 今季初めて訪れる場所も多く、川の表情や地形は大きく様変わりしていた。雨水で根元の土砂を流された杉の大木。流された馬の瀬の土砂で浅くなった淵。流れは驚くほど変わってしまった。この地方を襲った豪雨の凄まじさを実感した瞬間だった。渓魚たちは無事だったのか?そんなことを想いながら水面に下りて行った。
 まずは岩盤の淵に繋がる瀬落ちとその下流の開きを攻めていく。水温は低く冷たかった。穏やかな流れを中心にDD−パニッシュ65SPやトラウティンウェイビー65を少し沈めて様子を伺う。支流の流れで水色は改善されたのだが水中50cm程の視界しかない。ルアーの直後を追う魚しか把握できないが、瀬落ちから淵までの速い流れでは全く気配は感じられない。やはり潜んでいるのは穏やかな淵からトロ瀬にかけてだろう。そう考えながら早い流れのあるエリアは軽く流し、トロ瀬にかけての地形変化を重点的に探っていった。


【秋色の気配】

 淵とトロ瀬の間にあった馬の瀬からその下流は、去年とは地形が変わっていた。トロ瀬の中央がミオ筋のように少し掘れているような気配がある。この水色では川底の構造まで把握できなかったが、僅かな地形変化でも攻めてみる価値はある。穏やかな流れに乗せてウェイビー65Sの赤金を送り込んだ時だった。ルアーにガツンと当たりがあり、魚が反応してきた。ギラギラと鈍く金色に輝く体側に、赤い差し色を纏った良型のアマゴだった。水面に浮き上がり、激しくローリングして抵抗した後、反転して水中に逃げ込む際にフックが外れてしまった。折角出会えた秋色なのに残念ながら手にすることができなかった。
 午前中はこの魚の反応があっただけで、時刻は昼になっていた。昼食は分かれて釣りをしていた釣友と情報交換を兼ねて一緒に取った。彼によるとお昼近くに入ったトロ瀬と淵で、25cm前後のイワナやアマゴが相手をしてくれたと嬉しそうに話している。さらに澄んだ支流が合流する淵では、グリーンバックの良型アマゴや尺クラスの秋鱒を確認したとのこと。少し落差のある入渓しにくいポイントはまだ手つかずであったようだ。久しぶりに魚の姿を見ることができたと彼は笑顔を見せている。秋の高原の爽やかな気候の中で、午前中の釣りを振り返りながら昼食を楽しみ、午後からのスケジュールを考えた。


【突然の水位低下】

 空腹が満たされた私たちは、FM放送と心地良い秋風に包まれながら昼寝をしていた。目覚めると時刻は午後2時少し前。そろそろ釣りの準備をする時刻が迫っていた。川の様子を見ようと何気なく橋の上から本流筋の流れを見て驚いた。濁りが取れていた。ダムが放水をやめたようだ。水面の白波は姿を消し、川底が確認できるほど濁りはなくなっていた。これはチャンスだと直感した。WEBで確認すると午前10時頃から水位は20cm程下がった。直ぐに釣友を起こしてこの事実を伝え、入渓ポイントを確認した後、お互い釣り場に散って行った。集合時間は6時半。二人は薄暗くなるまでの時間を思う存分釣りを楽しむことにした。


【小堰堤のバックウォーター】

 私が最初に訪れたのは小堰堤のバックウォーター。今の水位であれば申し分ない。早速トロ瀬、瀬、瀬落ちの開きの順に攻めていった。水色が改善されたので、魚の動きもしっかり確認できた。DD−パニッシュ65SPで様子を伺うと、岩盤にピッタリと寄り添うイワナや、沈み石の足元に20cm程のアマゴが確認できたが秋鱒の気配はない。深場はチェリーブラッドDEEP70のトゥイッチングやボトムノックスイマー35の縦の動きで誘ったが、これにも反応もない。午後3時頃。まだ周囲は明るく、夕マズメまで待たなければならないのか?そんなことを考えながら大岩と岩盤に囲まれた瀬落ちを攻めていく。


【狙い通り!】

 手前の落ち込みや。足元のかけあがりの深みに潜む魚をチェックしたのち、対岸の岩盤と大岩の間の流れが気になった。奥のえぐれた岩盤に枯れた木々が垂れ下がっている。盛夏であればイワナの格好の隠れ家となるポイント。ルアーを通したいのだが、手前の大岩の草木の枝と対岸の枯れ木に阻まれ、簡単には攻めることができない。そこで身を屈めながらウェーディングして距離を詰め、障害物をループキャストでかわしながらポイント上流の流れにルアーを送り込む。ロッドを立てたままDD−パニッシュのリップに水を噛ませ、穏やかな中層に送り込んだ直後に、メンディングしながら表層の早い流れにラインを乗せ、岸際と平行にDDパニッシュをドリフトさせていく。キャストは一発で決まった。
 垂れた枯れた木の下を流れ落ち、岩盤のえぐれの前を通過したとき、真っ黒く大きな魚がゆっくりとDDパニッシュを追って姿を現した。「おっ!」思わずそう叫んでしまった。ゆっくりドリフトしていくDDパニッシュを追って流れに出てきた大きな黒い魚は、そのまま瀬落ちの下流の岩まで追尾してく。岩の裏でゆっくりとターンをさせ、ロッドティップを送り込んでルアーに変化を加えると、黒い魚は溜まらずバイトしてきた。  

 「喰った!」ルアーを咥えた魚は、そのまま流れに乗って下流に下ったのちに川底に張り付き、さらに深くに潜ろうと抵抗する。魚の動きを確認しながらゆっくりと底から剥がし、流れを切りながら手前に寄せてランディングに持ち込んでいく。水面に浮いた黒い魚の正体はイワナでなく、秋色のアマゴだった。フックは顎に掛かっていた。無理をせずにやさしく足元まで誘導し、暴れさせることなくランディングに持ち込んだ。よく見ると顎だけでなく、リアのフックも蝶番にしっかり掛かっていた。リアクションではなくゆっくり見せて喰わせてことが、このフッキングに繋がったのだろう。


【秋色の雄アマゴ】

 狙い通りのポイントから、秋色のいいアマゴを引き出すことができた。それもキャストから流れに乗せてのドリフト、充分追わせたのちのフッキング。すべてが思い通りに決まり、獲ることができた魚が秋色の雄のアマゴ。猛々しい表情。挑戦的な目つき。本当に美しい魚だった。
 この時期の秋アマゴは盛期のイワナが好みそうな流れに潜んで居ることが多く、今日の魚はそのポイントに潜んで居た。キャストが決まったことで、思い通りのドリフトが実現したことが勝因だろう。こんなにうまく決まることはシーズンを通じて数回しかないのだが、その結果がこの秋鱒であれば何も言うことはなかった。美しい秋鱒を画像に収めながら、静かな流れを取り戻した渓で至福の時を過ごした。








【期待の夕マズメは】

 30分くらいだろうか。全身ずぶ濡れになりながら一尾の鱒に夢中になり、時の経つのも忘れてカメラのシャッタ-を切った。そして次なる本命ポイントである瀬落ちの淵に入った。気持ちは高ぶっていた。勢いに乗ってこの淵でもいい魚と出会えるのでは? 期待とともに釣りを開始したのだが、夕マズメの時間帯にさらなる良型との出会いは実現しなかった。先行者に叩かれてしまったのか?魚が居なかったのか?
 後で調べるとダムの放水中止で水位が下がり始めたのは午前11時過ぎ。ここから夕方の4時頃まで水位は下がり続け、透明度も増していった。夕まずめの時間帯に流れは落ち着き、その後水位の変化は見られなかった。
 釣友がいい思いをした時も、私が下流域のトロ瀬で良型を掛けたタイミングも、午後最初のポイントで秋鱒を獲った時刻も、水位が変動していた時間帯であった。日中にも関わらず、透明度が増し、穏やかなになった流れに魚の活性が上がったのか?
 それとは対照的に流れが落ち着いてしまったことが原因なのか?肝心の夕マズメに思ったほど魚の活性が高くなかった。これは先行者の影響も考えられるため一概には言えないものの、関連性が無いとは言えないだろう。この不思議なところが興味深く、大自然を相手にしている釣りの楽しみの一つでもある。


【これから】

 とうとう最終週を迎える。最後にランドロックに出会えるのか?はたまた本流域の大アマゴとのチャンスが待っているのか?すべては水量次第のところなのだが、残念ながら大型台風24号と秋雨前線の停滞により、天候が日々変化し不安定になっている。荒天の間隙を縫って、何とかラストチャンスに賭けたいと思っている。今季のレポートがこれで終わるのかどうか?それは週末の天候次第である。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MT
◇リール シマノ ステラ C2500HGS
◇ライン DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー フロロカーボン 1.5〜2.5号
◇ルアー スミス  パニッシュ70F 70SP
DDパニッシュ65 トラウティンウェイビー50S 65S
チェリーブラッドDEEP70 MD82S MD82 MD75 MD70 ジェイドMD-F MD-SP MD-S MD-Sシェル
ボトムノックスイマーU ライト 35
バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンセプト48MD  D−コンタクト50 63
D−コンパクト48 D−インサイト44・53
D-ダイレクト55  F−セレクト 51 64
バック&フォース 7g  バック&フォース ダイヤ 4・5g
◇スナップ スミス SP♯0



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