冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 飛騨川釣行記 》


【イルフロッソTILF-67】

 今期愛用しているインターボロンXXの後継モデルに当たるイルフロッソが発売された。
本流から渓流のトラウトゲームは、XXシリーズを愛用してきたが、その系譜を引き継ぐモデルとしてどう進化したのか?非常に楽しみであった。初めて手にした瞬間、
「すこし軽くシャープになった。」
と感じられた。ティップ径がこれまでよりも細くしなやかになったようである。ガイドもトルザイトリングで持ち重り感を感じることなく、小さすぎないガイド径はラインシステムを組む釣人には優しいセッティングだ。
「早く試したい!」
そんな衝動に駆られ早速いつもの飛騨川の本流に試し釣りに出掛けた。


【流れを探して】

 道中、付知川、加子母川、乗政川と眺めてきたがどの河川も渇水のようだ。そのうえ今日の益田川は鮎の解禁日。川沿いの駐車スペースにはこの日を待ち侘びた鮎師の姿があったが、どの鮎師の表情も晴れ晴れとしたものではなかった。この渇水では魚も苔も十分に育っていないだろう。当然アマゴたちも思う様に餌を獲れていない可能性がある。少しでもいい環境を探して、今回は益田川の下流エリアに車を走らせることにした。


【ダム河川】

 飛騨川は多くのダムにより流れが分断され、この放水は釣果に大きく影響を及ぼす。そのため渇水であっても放水のあるエリアは充分な流れが確保されるため、どこが放流されているのかを把握する必要がある。幸いこの日は益田川漁協管内の放水口からの放水があったので、この下流のエリアをピンポイントで撃っていく事にした。
 最初のポイントは排水口のすぐ下流のエリア。排水口の上流は穏やかな流れだが、ここから下流は上流からの冷たい水がたっぷり排出され、水色ともにいい流れを形成していた。岩盤を切り裂くような流れは、充分な深みがあり、大型が潜んでいそうな雰囲気に満ちていた。今日はイルフロッソの感触を確認することが目的であった。そのため渓流釣りとは思えない8時からのスタート。流石にここでアユ師に出会うこともなく、釣り場周辺には私一人。早速イルフロッソTILF-67を手にポイントに降りていった。

 まずは放水直後の激流エリア。クリアな水色の中を足場の高い岩の上から狙うため、居ればすぐに確認できる。ここでは水噛みのいいチェリーブラッドDEEP70で流れの巻き返しとヨレに付く魚の反応を確認しながら、魚が居るかどうか確認していく。


【曲がりを楽しむ】

 水深3mはあるだろうか?流れに乗せて対岸の岩盤付近まで送りこみ、その手前でベールを戻して水流を掴み、ステイさせて岸際をチェック。反応がなければゆっくりと流芯脇を引きながら中層からの突き上げてくる当たりを待った。何度かトライし流すコースや引き方を変えて足元まで引いてくると、ブルーバックのアマゴがルアーにアタックしてきた。尺まではないが本流育ちのシルバーのボディーをまとった筋肉質の魚体。激しい水流により喰い損ねたようで、リアフックが背中に掛かってしまいスレ掛かりとなってしまった。魚はジャンプしながら右へ左へ走り回る。しばらく走り回る魚とのやり取りでイルフロッソの曲がりとバッドパワーを確認しながら、いよいよランディングのタイミング。しかし足場が悪くなかなか水面にアプローチできない。どうしようかと思いあぐねていると、魚が再び水面を割って空中に飛び出し、その拍子に外れてしまった。40クラスの大アマゴがかかったら獲ることができるのだろうか?そんなことを考えながらそのまま釣り下がって行った。


【中層を意識】

 次のポイントは、強い流れが対岸の岩盤に当たったあとに少し開けたポイント。この流も水深は3m以上あるだろう。先程の激流とは異なりゆったりとした流れ押しの強い流れが下流の絞り込みに向って流れている。その絞り込みの前は下流に向かって浅く地形が少し変化していた。その中心に大きな岩が頭をのぞかせている。
 流心はこの岩に真っすぐ当たり、その両サイドは緩い流れとなっている。岩盤の大岩が張り出しているので、この岩盤に足を掛けながら流れの前に出ていくことになるのだが、魚へのプレッシャーを考え、まずは奥まったワンドから遠投でこの岩の周囲を探ることにした。


【MD82S】

 このポイントは水面に近くからアプローチできたのでルアーはチェリーブラッドMD82Sのアユカラーをチョイス。押しが強い流れの中では流石のDEEP70も少し動き過ぎたようで、折角の魚をミズバイトさせてしまった反省からこの選択となった。
「え!サクラマス狙いですか?」
と違和感をお持ちになる方も居るでしょうが、実は2シーズン前からこのMD82を積極的に大アマゴ狙いに持ち込んでいる。狙っているのは本流では40アップ。ランドロックは50オーバー。これらがターゲットならばなんの問題もないでしょう。そう怪訝そうな表情を浮かべるか方には説明しているが、大型は流れの強い一等地の近くの流れの緩い場所に潜んで居ることが多い。ここにスモールミノーを送り込もうとしても流れに耐えられず浮き上がるか、飛びだしてしまうことが多い。このサイズならば尺前後のアマゴは全く平気で喰ってくるし、小型のバイトは減るので好都合。そんなことから流れの強い本流域や水深のある縁などの大場所では強気のビッグプラグを多用するようになってきた。今回も何の躊躇もなく蒸着メッキのアユカラーを対岸近くに打ち込み、岩盤に平行に沈め中層に馴染んだところで竿先を烈しく煽り、リアクションバイトを誘っていった。


【大アマゴ】

 時刻は10時を過ぎ、そろそろ気温も高くなってきた。普通のアプローチでは老獪な彼らの口を使わせることは困難な時刻だ。しかし上流からの冷ややかな水温と豊富な水量は、彼らの警戒心を薄れさせたようで、流心を横切る寸前で魚と思われる前あたりが繊細なイルフロッソのティップが捉えた。当初この僅かな当たりは、頭を出していた岩が水中で連なっているのだろうと沈み石程度にしか考えていなかった。そのため何の疑いも無くそのままチェリーブラッドMD82Sで大岩前の早い流れを横切らせ、足元まで引いていた。すると何かがルアーを追っている!それもデカい。
「あっ。あまごだ!」
ルアーの後ろを追尾し、左右に大きく体を揺らしまるでルアーを煽るような動きを見せて迫ってくる。心臓をバクバクさせながらも
「やる気のある魚だ。もらった。」
心の中でそう思いながらトゥイッチを掛けてすぐリトリーブを止めた。バランスを崩した後のステイで喰わせる。そんなイメージだったのだが、残念ながら目測を誤ったのか?ここでもミスバイトをさせてしまった。水面に姿を現した大アマゴは反転し、大きな波紋を残したまま流れの中に消えていった。ものすごい体高のアマゴだった。 「しまった。いい魚だったのに!」


【冷静な判断】

 時刻は10時15分。その場に座り込み、清々しい青空を眺めながら頭を切り替えるしかなかった。ポイントの選択は間違っていなかった。またチャンスはあるさ。そうポジティブに考え、グレゴリーのヒップバックのお茶を取り出し一息入れた。
いま思えばこの余裕が良かったようだ。これまでならすぐに同じルアーを打ち込み、魚に警戒心を与えてしまうところだが、この時は少し違っていた。魚が再び定位しそうな場所を休ませたうえで、トレースラインを替えて再び先程の魚を狙い始めた。
ただこの時点でまさか喰ってくるとは思ってもいなかった。釣果再優先の釣行ではないことで冷静にゲームを組み立てることができたのだろうが、良型を見たことで反対に集中力は高まっていたようだ。冷静に状況を分析したうえで今度はチェリーブラッドMD82を選択した。
前あたりはあったが、針に掛けていないのでプレッシャーは高くはないだろう。やる気は充分あり、喰い損ねたことで活性は反対に高まってはいないだろうか?そう考え、敢えてフローティングを選択した。カラーは少しアピールを抑えたパールメッキのヤマメカラー。シルバーの蒸着フィルムの上にパールを吹いた非常に美しいヤマメカラー。柔らかな光の反射で、必要以上にプレッシャーを与えないカラーだ。このヤマメのMD82を先程の岩の周りからダウンクロスで送りこみ、最後は足元深みの緩流帯をフルダウンでゆっくり引いて様子を見ていった。


【喰った!】

 先程の岩の前をダウンクロスで探り、次に少しずつ角度を変えて様子を見ながら、いよいよ岩とその手前の緩流帯をダウンで探っている時だった。モゾモゾといった当たりのあとで、なにかがルアーを加えたような感触がラインを通じて感じられた。あの大アマゴならガツンと持って行きそうなものだが?少し違和感を覚えたため、確認のためにロッドを立てようとすると、引きこむような当たりとともにイルフロッソの竿先は下流に激しく持って行かれた。
「喰った!」
確信は無かったが、この引きから先程の大アマゴであることは容易に想像はついた。魚は頭を下流に向けて流れに乗って下っていく。強い流れに乗ってしまったのでロッド操作だけでその走りを止めることはできるはずもなく、弱めのドラグのままプレッシャーをかけないように一旦魚を走らせた。そしてドラグの滑りが収まったと同時に、ドラグを占め込みながら流心から引き離し、頭を上流に向けさせた。そこからはロッドの曲がりとバッドパワーで足元の緩流帯に引き込み、ランディングの体制に入っていく。魚は上流に引き上げられるのを嫌がり、流れに逃げ込もうと激しく抵抗を見せた。しばらくするとラインを体に巻きつけてしまったようで、激しい走りは収まり重さとの戦いとなった。水圧を受けながら手前のワンドに誘導し、腰のインスタネットで大人しく水面に横たわった大アマゴを一気に掬いランディング。やっと益田川の本流域で大アマゴをキャッチすることができた。

大アマゴは体高が凄く、背中はオリーブ色をしていた。赤い朱点を鏤めた如何にも本流育ちの良型。長さは38cm。精悍な顔つきのカッコいい鱒だ。すぐに画像に納めたい欲望にかられたが、まだこの流れを攻め切っていなかったのでここは一旦我慢をし、活かし袋に入れて魚を休ませそのまま釣りを続けた。

 大アマゴが潜んで居た大岩周辺をD−コンタクト85、D−インサイト64、メタルミノーEXなどで一通り攻めたが、ここでは反応が得られなかった。次にそのまま岩盤をへつりながら下流に釣り下っていった。いったん狭まった流れはこの下流で広く開き、流速も穏やかな深瀬になっていた。此処から下流は断崖絶壁で足場が無く、もう釣り下がることはできない。撮影時間を考えるとここが午前中最後の場所だった。 

緩やかそうに見えた水深のあるこの深瀬は、実際にルアーを通すと押しの強いしっかりとした流れが通り、川底もあまり変化があるように見えなかった。そこで中層を意識しながらルアーを少し沈め、様子を見ていくことにした。先ずはチェリーブラッドMD82Sのアユカラーで広く中層の反応を確認し、次にD−コンタクト85のGピンクにルアーローテーションして更に少し沈め、縦方向の動きとアクションの違いでリアクションバイトを誘っていった。

するとダウンクロスにキャストしたD-コンが流れを横切り、其の後のターンで向きを替えてダウンの状態に入った直後、押さえ込むようなあたりとともに何かが喰ってきた。今回は先程の魚とは喰い方が明確に違っていたが、このさかなは良く引き、右へ左へ橋井利回り、最後は足元のドロップオフとなった岩盤のエッジを真下に潜り込むような様子さえ見せた。なにか変だぞ?アマゴなのか?大アマゴにしては喰ってからの反応がおかしなこの魚の正体はなんなのか?疑問に感じながら、少し流れ向ってロッドを出して岩盤の根ずれを回避しながら、魚とのファイトを1分程味わった。流石に底ににげこもうとしていたこの魚も観念したかのように水面に向って浮き始める仕草を見せると、今度はいきなり水面を割ってその姿を晒しながら今度は上流に向って走り始めた。「ニジかな?」なんとなくローリングすることなく、走り回るこのファイトの様子にそう思い始めた。上流に向っていた魚の頭を下流に向けさせ、水面に浮きあがってきたところを、ネットで救い上げてランディング。やはり予想通りニジマスだった。黒い斑点がびっしりはいり、頭は丸いメスのにじますだと思われる。それにしてもよく引くニジマスで充分イルフロッソの曲がりを楽しむことができた。

 さあどうしようか?先程の大アマゴとともに二尾並べて写真をとも考えたが、活かし袋はもうない。ネットでアマゴのところまでこの魚を運ぶには少し距離があり、水を切らなければ困難だったので、今回は岩盤のスリットの部分でニジマスだけを画像に残すことにした。今回D−コン85で30cm程のニジマスを喰わせたことで、ますますこの本流域の流れの強いエリアについては、大型プラグの優位性を認識することができた。これまで本流アマゴは70cm位までと勝手な先入観でルアーを選んできたが、この川に潜む大型アマゴには8cmクラスは全く問題が無く、反対に強い水流の中でのアピール力と安定した泳ぎから大型プラグの方が有利であるとも感じられた。ルアーボックスの内容を少し変える必要があるなと改めて感じさせられる釣行となった。


【これから】

 これから本格的な梅雨を迎える。雨上がりの増水から下げ水の状況は、大型魚が流れに出てくる絶好のチャンスである。遠征組の私はそのベストのタイミングでの釣行は無理だが、スケジュールが合えば、流れがあるフラットなシャローエリアで大型のアマゴとのやり取りを楽しみたいと考えている。しかしなかなかそんな状況に出くわすことは少ないため、渇水の時期は流れがあるエリアをランガンで釣り歩き、8月の盆を過ぎたあたりから、いよいよ秋鱒での準備のために更に上流部の流れを釣り歩きたいと考えている。今季本流域で幸先よく一尾を手にすることができたので、8月に上流域で鮎を飽食した本流からの遡上鱒、そしてシーズンを締めくくる鮮やかなランドロックの遡上鱒に出会うことができたなら、2019年は本当に素晴らしいシーズンとして記憶に残ることだろう。








● マイタックル

◇ロッド スミス イルフロッソTILF−67
◇リール シマノ ステラ C3000
◇ライン よつあみ G-Soul WX-8 0.8号
◇リーダー ナイロン 2.0号
◇ルアー スミス  チェリーブラッドMD82 MD82S MD75 MD70 DEEP70
パニッシュ70 70SP  DDパニッシュ65 65SP
トラウティンウェイビー 65S
ボトムノックスイマー 35  バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンタクト63 72 85 D−インサイト64
メタルミノーEX バック&フォース リッパ13g
◇スナップ スミス SP♯0



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