冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 飛騨川釣行記 その2 》


【ダム河川】

 過ごしやすかった今年の夏だったが、長い梅雨の後いきなり酷暑がやってきた。梅雨の間は水位水色とも安定せず、本流エリアでの出会いのチャンスは少なかった。何度か大アマゴを仕留めた流れに足を運んだものの、ゲリラ豪雨の影響なのか?上流部のダムの水はカフェオレ色で、釣りができないことも多かった。ダムで分断された河川の難しさもあり、今期は盆からの秋鱒に集中することにした。


【盛夏の成果】

 川から距離を置くと無性に恋しくなるのは世の常で、何だかんだと理由をつけて盆休みの最中に今季初めての上流部に行ってみた。当然釣り人からのプレッシャーは高く、素直に口を使ってくる魚はやはり居なかった。小型は相手をしてくれたが、お目当ての遡上魚は探し出せても喰わせるまでには至らなかった。エリアは特定できたのでこの日はこれ以上の深追いもしなかった。そこでせっかく高山まで来たので帰りは高山市民が愛するラーメンと焼きそばの名店「ちとせ」まで足を延ばすことにした。鰹だしの優しいスープに縮れ麺。懐かしさすら感じられる高山の中華そばを堪能した。これも遠征の楽しみの一つである。今回これといった釣果に恵まれなかったが、秋鱒狙いの釣りはいつもこんなもの。美味しい「ちとせ」のラーメンを楽しめたのでまあいいか。


【秋鱒調査】

 盆休みが明けの週末。いよいよ秋鱒狙いで上流部のポイントに向かった。この日は台風と不安定な気圧配置でいつ雨が降り出すのかわからない状況。前日までにまとまった雨が降ったようだが、これまでの経験から釣りはできるだろうと踏んでいた。現地に着くと幸い先行者は居なかった。恐らく多くの釣人は雨の影響を懸念し釣り場を変更したようだ。今日は何かいいことがありそうだ。


【廃道を分け入り】

 すぐに沢の流れを確認したが濁りはない。流量も心配するほどではない。これならメインの流れもなんとかなるだろう。遡上鱒がこの雨で動き始めてくれることを期待して薄暗い廃道を進んでいった。
 今年は熊に関する報道が多い。私も今期下流の里川エリアで子熊に遭遇してしまった。幸い母熊に出会なかったので事無きを得たが、ここではいつ出会ってもおかしくはない。鉈と熊スプレーの対策を施し、笛を吹き、鈴を鳴らしながら森の中に入っていった。


【肌寒い流れ】

 気温は20度。流石にウエットスタイルは厳しいだろうと今回はライトウェーダーに身を包んだ。ウェーダー越しに感じる渓の流れは涼しく、秋の気配すら感じられた。一雨ごとに気温、水温ともに下がり始め、徐々に渓魚たちは秋を意識していく。増水の名残は至る所に感じられ、白波が目立つ今日の開きには魚の着き場は限られていた。
 川幅が狭い上流部を攻めるため、短いながらも秋鱒に備えてパワーのあるIBXX-53MTHを選択した。リールはロッドに合わせて番手を落とし2000番のハイギアを合わせ、ラインはPE0.6号にナイロンの2.0号を結束し万一に備えた。


【DDパニッシュ65SP】

 水嵩が増し流れも押しも強い今日を攻めるには、この水圧に耐えられる泳力と存在感がルアーに求められる。この状況であれば魚たちは流れの速い表層にはまで出てくれないので、潜むレンジまで送りこむ必要がある。そこでDD-パニッシュ65の出番だ。
 スリムなシルエットながらロングリップを備えたこのルアーは、深場を狙うDEEPとしてではなく、レンジコントロールするためのMD(ミディアムディープ)として使用することが多い。今日の状況であれば、流心脇の巻き返しや緩流帯に身を寄せている秋鱒を狙ってルアーを中層に送りこんでいく。早い流れにはそれなりの工夫が必要だ。アップやアップクロスでは沈む間もなくあっという間にポイントを通過してしまう。そのためダウンクロスやダウンで中層をステイさせたり、水を掴ませ送り込み、白波の下に潜んで居る魚をダイレクトに狙っていく。

 大岩前の鏡や巻き返しや岸際を通る緩い流れの分流で、餌を待っているイワナたちが姿を見せ、飽きない程度に相手をしてくれた。特に落ち込みの手前の大岩周りの鏡や倒木の陰には、良型のイワナが待ち構えていることが多く、高い確率で反応をしてくれた。
 状況によっては水面を割ってルアーを襲う盛夏のような活性の高い個体や、婚姻色なのか?鮮やかな色彩の魚の姿が見られるのもこの時期の特徴なのかもしれない。川中の魚達の変化に季節の移ろいを感じながら、手ごたえだけでなく眼でも楽しませてもらった。それも全ては雨による増水の恩恵で、再びリセットされた渓に魚たちの活性も高まっていたようだ。


【良型イワナ】

 荒瀬の落ち込みでは、岩盤の巻き返しにDD-パニッシュ65SPを乗せて一旦送り込んでいく。中層にルアーが入ったことを確認し、流れに乗せて岩盤際の白泡の下をドリフトさせて流し込んでいく。ロングリップが底波をしっかり捕らえ、白泡の中に潜む魚たちを誘惑すると、何かが溜まらず強い引き込みとともにDD−パニッシュを襲った。そのまま下流に走り、白波の切れ目から姿を見せてくれたのは良型のイワナであった。
 恐らく岩盤の前の白泡の中で、流下してくる餌を待っていたのだろう。DD-パニッシュ65SPを中層に送り込み、しっかり見せたことが功を奏したのだろう。少し秋色の入った35cmの良型のイワナだった。





【攻略法】

 今日のように増水した開きや瀬の強めの流れの中では,流れに負けることなく泳ぎ切るルアーを中層にしっかり送り込むことが大切だ。まずはゆっくり流し、反応がなければ次は激しくトゥイッチングでリアクションバイトを誘う。幸い今日は流すだけで喰ってくれたが、産卵を意識した秋鱒は普通に流しただけでは反応しない場合が多く、激しいアクションで喰わせる後者が有効な場合が多いと考えている。
 この攻め方でも反応が得られない時は、これまでDシリーズをフォローに使ってきたが、ここ数年はボトムノックスイマーを多用することが多くなった。ボトムに素早く沈み、トリッキーなスイングアクションとリトリーブ時の微振動、リフトアンドフォールなど多彩な攻め方が可能で、全く反応のないポイントから良型を引き出してくれる頼りになるルアーだ。飛距離も申し分なくこの日も反応のない深場からイワナを呼び寄せてくれた。








【良型アマゴ】

 冷涼な流れの中で秋鱒を探して遡上してきたが、ここまではアマゴには出会えていなかった。元来この谷はイワナの渓なのでアマゴの数は少ないが、この時期だけは遡上鱒を含め秋色のアマゴに出会うチャンスがある。しばらく流れを溯上してきたが、いよいよ渓相も高低差のある落ち込みや水深のある流れが多くなってきた。退渓点も近いようだ。
「まだ秋鱒の遡上スイッチは入らなかったのか?」
そんなことを考えながら落ち込みの脇の巻き返しにDD-パニッシュ65SPを送りこみ、流れに乗せてドリフトさせていく。スッと竿先が入り、何かがルアーを咥えて下流に走っていく。まずまずの大きさの魚のようなので、無理せずいったん魚任せに次の落込みまで下らせ、その後流れを切って手前に寄せることにした。魚は波立つ高低差のある荒瀬を下り、下流に落ちたところをIBXX-53MTHのバッドで水面まで浮かせ、手前の緩流帯に引き込んでいく。「おっ!アマゴだ!」澄んだ水面に灰色の背と白っぽい腹が僅かに見えた。慎重にやりとりをして手前に寄せ、ランディングネットで確実に取り込んだ。
 良型の雄。特徴的なパーマークと赤い婚姻色が浮き上がった美しい渓アマゴ。朱点が大きな鮮やかな里川エリアの魚とは装いが異なり、如何にも深山に潜んでいそうな清楚な佇まい。早速撮影場所を確保して画像に残していくのだが、森が深く日差しが弱いために撮影には大変苦労させられた。大きさは32cmあった。尾鰭の上下に赤みが差し、秋の深まりとともにこれから赤黒く厳つい表情の雄になるのだろう。手早く画像に納めると、静かに元の流れに戻した。










【これから】

 しばらく降り続いた雨で渓はリセットされたようだ。水量も水温もいよいよ下がり、秋鱒を迎えるための準備が整い始めたようだ。今回は幸運にも先行者もなく、増水後の好条件の元で上流域の釣りを楽しむことができたが、今後は本釣行のようにうまくはいかないだろう。条件は厳しく可能性は低くなろうとも、美しく猛々しい秋鱒にはこの時期にしか出会えない。次なるチャンスを求めシーズン終了まで渓を歩き続けたいと考えている。


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MTH 60MT  イルフロッソTILF−67
◇リール シマノ ツインパワー C2000HGS
 ステラC2500HGS バンキッシュC3000MHG
◇ライン DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
よつあみ G-Soul WX-8 0.8号
◇リーダー ナイロン 2.0号
◇ルアー スミス  DDパニッシュ65SP 65F
パニッシュ55 55SP 70 70SP  チェリーブラッドMD82 MD82S MD75 MD70 DEEP70
トラウティンウェイビー 50S 65S
ボトムノックスイマー 35  バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
D−コンタクト63 72 85 D−インサイト64
メタルミノーEX バック&フォース リッパ13g
◇スナップ スミス SP♯0



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