冨安 隆徳

愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。

主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。


《 2019 飛騨川釣行記 その3 》


【9月の釣り】

 9月になるといよいよ大型の魚たちは、夏の安住の地であった深場や薄暗い静かな流れから、産卵を意識して浅瀬に姿を見せるようになってくる。日本海に注ぐ河川は、9月10日から禁漁となるため、最期の望みをこの川に求める釣り人で賑やかになってくる。それ故攻め処は重なり、人と出会わないことのほうが稀な時期でもある。それが9月末の週末ともなればその密度はさらに濃く、魚達へのプレッシャーは相当なものだ。
 結論から申し上げると、今秋は残念ながら満足のいく魚を仕留めることはできなかった。限られた条件の中で、私なりに楽しめることができた。素敵な釣り人との出会いもあった2019年の秋鱒狙いの釣行を振り返ってみることにしよう。


【里川エリア】

 秋鱒狙いは、盆明けの里川エリアからスタートするのがいつものスタイル。ここではアユを飽食し大きくなった河川遡上の大型アマゴがターゲット。水温の高いこの時期の魚は、活性があまり高くはない。居ても反応しないことも多く、彼らのスイッチを如何に入れさせるか。これが鍵になる。この時有効なのがリアクションの釣りである。私は少し強めのロッド インターボロンXX IBXX-60MTで、水深のある淵や静かな流れに大きめのルアーを送り込み、激しく躍らせ、食性を失い始めた鱒たちの闘争心や狩猟本能に訴えていく。
 画像の魚は、淵の落ち込み付近に逃げ込んでいた雌のアマゴ。張り出した岩盤の向こう側(画像参照)に、回り込むようにサイドキャストで打ち込んだチェリーブラッドDEEP70のアユカラーで喰わせた。着水後直ぐの激しいトゥイッチングに反応してきた。手前の深場では反応はなかったことから先行者の存在を想定し、リスクを冒して竿抜けを狙っての結果だった。ファイト中にひと回り大きな魚が後を追うようにチェイスがあった。ペアリングしていた雄かもしれない。尺には届かなかったが秋色を纏った美しい魚であった。




 良型のアマゴが里川から姿を消し始めた夏の終わりの里川では、アマゴの付き場に良型のイワナが姿を見せることもある。流心脇の緩流帯から喰ってきたのは少し秋の気配が感じられるイワナ。トラウティンウエイビー 65Sのヤマメをしっかり捉えて喰ってきた。





【ランドロック】

 上流域のランドロックのポイントに足を延ばしたのは9月に入ってからだった。ここではトロ瀬や渕尻など、遡上鱒が足を止めそうな地形を川通しで探し、ポイントを絞り込んでいく。





 ここでも基本はリアクションバイトで、威嚇してくる魚に口を使わせるイメージで狙っていく。気配を消しながら流れの中から魚を探し、ルアーを見せて、追わせて喰わせる。ルアーは少し大きめを選び、トロ瀬や開きはパニッシュ70やチェリーブラッドMD70を選択。増水時や水深のある流れや落ち込みは、DD−パニッシュ65SPやジェイドMD、ボトムノックスイマー35などで、深みに身を寄せている魚の鼻先を通すイメージで誘っていく。
 今季最大のチャンスが巡ってきたのは9月の下旬。
 まずは早朝に瀬落ちの弛みから姿をみせてくれたのいは良型のイワナ。普段はイワナが中心の流れだが、秋鱒が遡上するこの時期は賑やかになる。遡上中の秋鱒(湖沼型アマゴ)は、イワナと同じような緩い流れや弛みに定位することが多く、魚を掛けても魚種を確認するまでは気が抜けない。雨の濁りが入り始め、魚達の活性は少し上がり始めていたようだ。




 その後雨は激しさを増して本降りになってきた。徐々に水嵩が増した流れには、濁りとともに水面には落ち葉が目立つようになってきた。透明度が薄れ始めた瀬落ちの開きで、時折ヒラを打つ大型の魚影を見つけた。直ぐにチェリーブラッドMD70のブルーピンクに変え、流れに乗せて魚の鼻先をトゥイッチングで誘うと、狙い通りその魚はルアーを追ってきた。そこで沈み岩の後ろでターンさせようとロッドを立て、喰わせの間を与えようとした瞬間、運悪く落ち葉を拾ってしまう。場を荒らさないよう慌ててピックアップすると、突然姿を消したルアーに行き先を見失った魚は、混乱した様子を見せる。興奮が収まり切らなかったようで、水面を割ってジャンプし侵入者を威嚇するような素振りを見せた。そして元の流れに戻り、その後姿を見せることは無かった。

 ジャンプした瞬間に、背中の盛り上がりと少し曲がった鼻先のシルエットが今も脳裏に焼き付いている。灰色の背中の側面には鮮やかな朱色の縦縞が入り、素晴らしい雄の秋鱒だった。大きさは45cmを超えていただろう。明らかに魚のスイッチは入っていた。「あの落ち葉がなければ・・・・。」そんな悔しい思いとともに、今季一番の秋鱒との出会いのチャンスは残念な結果で終わることとなった。


【素敵な出会い】

 上流部の支流の沢筋を釣りあがっていったとき、素敵なシニアのフライフィッシャーに出会った。お揃いのキャンバスハットに使い込んだタックル。まるで雑誌からそのまま出てきたような素敵なご夫婦だった。
「あそこであんな大きな魚がいたのよ!」
 嬉しそうに話す奥様に、ご主人が笑顔で微笑む。林道を下る帰り道、しばらく釣果や釣り場のこと、何処からみえたのか?お話をしながら車まで戻った。その会話からご主人だけでなく、奥様も心から釣りを楽しまれている様子が感じられた。微笑ましく、羨ましささえ感じるとともに、私自身はどうなのか?少し考えさせられた。そしてこの日は早めに山を下り、栗きんとんをお土産に妻の待つ自宅に戻ることにした。


【今季の釣りを振り返って】

 今季は夏まで本流域を中心に釣り歩き、盆明けからはほぼ秋鱒狙いで釣りを組み立てた。幸い幸先よく良型の本流アマゴを手にすることができたが、酷暑の夏に1か月釣りを控え、満を持して臨んだ秋鱒だったが、残念ながら手にすることはできなかった。秋鱒のシーズンは短く、その日の状況に左右されるためにチャンスは多くない。出会うチャンスは経験値とともに高まってきたが、少ないチャンスを確実にものにすることが今後の課題なのだろう。釣りはいつまで経ってもゴールのない遊びということなのだろうか?


● マイタックル

◇ロッド スミス インターボロンXX IBXX-53MTH IBXX-60MT 
◇リール シマノ ステラ C2500HGS ツインパワー2000HGS
◇ライン よつあみ G-Soul WX-8 0.6号
DUEL HARDCORE X-FOUR PE 0.6号
◇リーダー ナイロン 1.5・2.0号
◇ルアー スミス  DDパニッシュ65 65SP パニッシュ70 70SP
チェリーブラッドMD70 DEEP70 MD75 トラウティンウェイビー 65S
ボトムノックスイマー 35 バルサハンドメイドミノー 50〜65mm F・SP・S
ジェイドMD F・SP・S・シェル  D−インサイト64



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