【はじめに】
長良川は馴染みのない川ではなかったが、釣りのフィールドになることはこれまでなかった。きっかけは昨年7月の飛騨川の災害からだ。試しに郡上管内の鑑札を取得し釣りをしてみると、素晴らしい流れに魅了されるまでそれ程時間は必要ではなかった。秋鱒の頃には支流吉田川と飛騨川を行き来するまでになっていた。大型との出会いのチャンスは何度かあったが、初年度はこれといった成果を残すことなく禁漁を迎えたが、この川に出合えたことが何よりの収穫であった。
【待ち遠しい梅雨入り】
感染症は5月の連休のころから再び我々の自由を奪い、消化不良のまま今季のサクラマスはゲームオーバーとなった。しかし私には長良川が控えていたので落ち込むことはなかった。Google Mapで地形を眺めながら思いを巡らすのも、久しぶりに新鮮な作業だった。どんな素敵な流れや素晴らしい魚達と出会えるのか?そう思いながら梅雨入りを待った。
【待望の梅雨入り】
梅雨入りしたとある週末、午前中に長良川を、夕マズメに飛騨川を攻めるプランで釣りに出かけた。前日まで雨で早朝の長良川は霞んでいた。濁りの懸念はあったが、少し増水しているだけで回復力は極めて高いように感じた。まずは緩流帯を備えた落込みや深瀬や瀬尻など、魚が足を止めそうな流れを選んで釣りを始めた。
ルアーはチェリーブラッドMD82、82Sをベースに釣りを組み立てていく。狙うのは本流アマゴとサツキマス。ロッドはスミスのイルフロッソTILF-67。繊細でスリムなブランクにしっかり粘るバッドはパワーがあり、本流鱒を掛けても充分なポテンシャルを感じている。少し大きめのミノーを激しく躍らせる操作性の高さも併せ持ち、小型ミノーから大型まで適応力の高いロッドである。
まずはMD82のヤマメをドリフトで流して様子を見ていく。反応が無ければ激しいトゥイッチングでリアクションを誘うのがいつもの展開。最後にカラーローテーションを行い、テンポよく釣り下って行く。穏やかな流れを中心に攻めたが、今朝はお留守のようだ。流石にプレッシャーの高い長良川。対岸や前後に釣り人の姿が途絶えることなく、魚はそれなりに擦れているようだ。
【でんでんアマゴ】
期待していた早朝は何の手掛かりも得られなかった。移動の準備をしていると携帯が鳴る!少し興奮気味な声は釣友からで、申し合わせた訳ではないが近くの瀬で釣りをしていたようだ。
「いい魚だよ!でんでんアマゴ」
でんでんアマゴとは、体高のあるヘラブナのようなアマゴのことである。スタイリッシュとは言えないが迫力のある容姿は鮎の名川“長良川”ならでは。昨年私同様残念な結果に終わった彼にとっては、まさに念願の“でんでんアマゴ”だった。
いよいよ日も高くなり瀬の釣りにシフトしようと移動をすると、釣友と鉢合わせしてしまう。
「ここだったのか?」
落ち込みから深瀬を攻め切り、満足げな表情の釣友が下流から上がってきた。次の流れに向かう彼から一通りレクチャーを受けた後、私はそのままここに残ることにした。
【MD82】
彼は70mmのミノーで釣りをしていた。ならばチェリーブラッドMD82のままビッグミノーに反応する魚を探そう。MD82の飛距離を活かし、対岸寄りの沈み根を積極的に狙っていく。手始めに沈み根の前を探り、次にそのままドリフトで根周りの白波を通していった。MD82は押しの強い深瀬の中で光を放ちながら、抜群の安定感で魚を誘い続けた。綺麗に流れを掴みながらいよいよターンの体制に入ろうとしたとき、瀬についていた魚が溜まらず反応し、勢いよく下流に走った。
「喰った!」
バンキッシュの軽いドラグ音が小気味よく河原に響き、私は合わせを入れる。最初の走りこと激しかったものの長くは続かず、狙いの40cmクラスでないことはすぐにわかった。慎重に流れを切ってランディングすると、体高のある29.5cmの本流アマゴだった。いわゆる泣き尺と言われるサイズだが、コンディションが良く見栄えのいい魚である。別のポイントに移動した釣友に画像を送ると、
「俺の後で釣るなよ~! 俺のが寂しく思えるだろ~。」
驚くとともに悔しそうな声を上げた。
その後反応は無く、日差しも強くなったので釣友と早めのランチで情報交換をした。
【飛騨川】
彼はそのまま岐路に就いたが、私は予定通り山越えで飛騨川に向かった。この時期にいい魚を掛けたポイントが被災後にどうなっているのか見ておきたかったのだ。1時間ほど車を走らせ午後3時に目的地に入り、夕マズメをここで過ごすことにした。
この日の飛騨川は長良川同様に増水していた。これに上流からの放水が加わり激流になっていたが、被災前の流れは今年もそこにあった。まずは何事も無かったように回復していることに安堵し、早速釣りを始めた。
【バルサ11cm】
この激流ではルアーは限られる。ミノーであればチェリーブラッドMD82Sか地元の釣友が作ってくれた11cmのバルサだろう。手始めはここの定番であるMD82S ヤマメカラーを流したが、このコンディションでは必要以上に動き過ぎてしまう。コントロールさえ難しく、これではミスバイトを誘発しかねない。そこで固定重心のバルサ11cmのヤマメをダウンで白波の中に送り込み、流心脇のヨレをダウンで探っていった。このミノーはテール側にボリュームのある形状で、引きはチェリー同様に軽い。小刻みなタイトローリングで、深いレンジをトレースできる。ゆっくりとヨレを探っていくと、白波に潜んで居た40cmクラスの大型魚が姿を現した。
「喰え!」
思わず声を出してしまった。魚は喰い損ねたようで、勢い余ってそのまま下流に流されていった。魚の活性は上がっているようだが、あまりの水量で喰わせるためのいい流れが残っていない。何とかバルサの11cmにブルーバックの28cm程のアマゴを反応させたが、やはり喰い損ねたようで背掛かりになってしまった。地形はV字の渓相となりもう下れない。そこで高巻きし、下流に見える深瀬を最後のポイントにした。
【いきなり】
今日の最後は急斜面を下った深瀬である。岩盤と大岩の間を流れるこの深瀬は、いかにも大型が潜んでいそうな流れである。大型魚を掛けたことはないが、地元勢はここで良型を掛けている。増水時は流れが落ち着いたこの深瀬がいいのかもしれない。そう思いながらこの日反応のよかったバルサ11cmから投げ始めた。
岸際は大きな岩が点々としており、まるでダム湖の大規模なインレットのようだ。足元にいい流れが当たっている。静かに近づき流れに乗せてドリフトとさせると、いきなり活性の高い30cmクラスの魚がルアーを追ってきた。すぐにターンをさせ喰わせにかかるが、足元で反転し水中に消えていった。いきなりの反応に少し驚かされたが、針には触れてはいない。アプローチを変えて再び誘っていく。少し沖目を流すとまたも激しくルアーを追尾してきた。アクションさせるだけのラインは残っておらず、とっさに足元で8の字を書いてバイトを誘ったが、手前で静止し流れに消えていった。その後ここでは何の反応も得られなくなった。
【ラストチャンス】
せっかくのチャンスを逃してしまったが、まだやる気のある魚は居るだろうと考えた。
しばらく釣り下ったが、そう甘くは無かった。その後まったく反応はなく、そろそろ帰宅時間が迫ってきた。そこで唯一反応のあった流れを上流からアプローチしてみた。先ずは上流の沈み岩の裏にできたヨレにキャストし、そこから流れの中央をドリフトさせながら、流れの当たっている岸際の周辺をダウンで探っていく。
喰わせ損ねてから既に30分以上は経っていた。ここで再びバルサ11cmのヤマメに戻し、流れに馴染ませながら送り込んでいく。しばらく送り込んでいた時だった。何かがルアーに喰ってきた。水面に浮き上がらない様にロッドティップを下げてして流れを切り、手前に寄せてネットでランディング。先ほど盛んにルアーを追っていたあの魚とほぼ同サイズのアマゴだった。少し痩せてはいるが長さはありそうだ。念のためメジャーをあてると33cmあった。早速早上がりした釣友に画像を送ると、返信のメールからその悔しい気持ちが読み取れた。
【僅かな増水後の週末】
本流鱒を狙う時、水位変化は最も重要な要素の一つである。増水の濁りや餌の流下で魚の活性が上がり反応は良くなる。特に長良川の場合、他の河川では躊躇してしまいそうな増水でも魚が反応してくると地元の釣り人は言う。そのため敢えて天気予報や水位情報を確認しながら、水位が上がるタイミングを予想し釣行日を決めている。ただこの時期の予報はあまりあてにならず何度も裏切られてきた。
前回釣果で釣友を圧倒した私だったが、翌週は予報を読み違ってしまった。釣友と言えば、その前日に薄暗い早朝の瀬肩で43cmの良型を仕留めて見せた。あまりの魚体の素晴らしさに送られた画像に釘付けになったが、この手の魚は僅かな判断の違いが大きく釣果に影響をする。今季の彼の努力は目を見張るものがあり、その努力が報われ良かったと心から思っている。敬意を表するとともに私も続きたいと考えている。
早朝5時前に送られてきた良型のフィッシュメールに、すぐにお祝い返信したことは言うまでもない。これで大いにスイッチが入った。次は私の番だぜ!
■マイタックル
Rod | スミス イルフロッソ TILF-67 |
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Reel | シマノ ヴァンキッシュC3000MHG |
Line | ヨツアミ G-soul W8 PE 0.8号 |
Leader | バリバス ナイロン 2.5号 |
Lure | スミス チェリーブラッド MD82 MD82S MD75 MD70 DEEP70 SR90 SR90SS SR90T2 MD90 MD90S DEEP90 DDパニッシュ 65 65SP 80S 80SP 80F パニッシュ 70F 70SP 55F 55SP トラウティンウェイビー50S ボトムノックスイマーⅡ 35 41 D-インサイト 44 53 64 D-コンタクト 50/63/72 HYPER BLADE TR 54 DROP DIA 5.5g EDGE DIA 6.5g BUCH SPESIAL 10g B&F RIPPER 13g Back&Forth 7g K-STUDIO BRATS 11(バルサミノー) |
Hook | スミス シュアーフック 2G 3G 4G |
Snap | スミス SPスナップ #00 |
釣友
Rod | スミス イルフロッソ TILF-67 |
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Reel | ダイワ セルテート LT2500H |
Line | PE 0.6号 |
Leader | ナイロン 8lb |
Lure | B社 シンキングミノー 70mm Z社 フラットサイドシンキングミノー 60mm |